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経済・市場コメント

ジャクソンホール:パウエルFRB議長、利下げの可能性を示唆しつつ長期的な政策スタンスを再確認

米連邦準備制度理事会(FRB)は、米国経済に対するリスクのバランスが、政策スタンスの転換、つまり利下げを正当化する可能性があると示唆しました。

注目を集めていた年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でのジェローム・パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長による22日の講演は、市場の期待を裏切ることはなく、また併せて示されたFRBの金融政策の枠組みの変更も、FEDウォッチャーを驚かせることはありませんでした。FRBは慎重な姿勢を保ちつつ、短期的には政策金利を引き下げる軌道に乗っているようです。長期的には、金融政策の枠組みを微調整しつつ、物価の安定と雇用の最大化という二重の使命へのコミットメントを改めて表明しました。

短期的な政策の方向性に関する示唆

パウエル議長はまず、インフレと労働市場の見通しと、短期的な金融政策への影響について論じました。直近の連邦公開市場委員会(FOMC)直後の7月30日の発言と比較すると、パウエル議長の論調はハト派的でした。

議長は、「労働市場は完全雇用と一致する水準でバランスが取れているように見えるが、これは労働者の需要と供給の両方が著しく鈍化した結果生じた特異なバランスの状態である」と述べました。この異例の状況は、雇用に関する下振れリスクが高まっていることを示唆しており、「このリスクが現実のものとなった場合、大幅な人員削減や失業率の上昇という形で急速に顕在化する可能性がある」と警告しました。

一方、インフレ見通しについての議長の発言は、関税による物価上昇が、時間の経過とともにインフレの持続的な上昇圧力を誘発するリスクを控えめに見ているように見受けられます。特に、FRBは「労働市場が特に逼迫してらず、下振れリスクが増大している状況」を踏まえると、賃金・物価スパイラル(従業員が上昇する生計費を賄うために賃上げを要求し、ひいては企業が賃金コストの転嫁を迫られる状況)が関税引き上げによって生じる可能性は低いと判断しています。

FRBにとってインフレ期待は最新のインフレ・データと同じくらい重要だとみられますが、パウエル議長の講演は、関税がインフレ期待を押し上げるリスクについても重要視しているようにみえません。議長は次のように述べています。「しかし、市場および調査に基づく指標に反映されているように、長期的なインフレ期待の指標は、引き続き十分固定されており、FRBの長期的なインフレ目標である2%と整合的であるように見える。」

FRBの金利経路に関するシグナルを求める投資家が注目したのが、議長の次の一節でしょう。「インフレに対するリスクが……上方に傾き、雇用に対するリスクが下方に傾く中、……(そして)政策が制限的な領域にある中で、ベースラインの見通しとリスク・バランスの変化は、我々の政策スタンスの調整を正当化する可能性がある。」この発言を受けて、パウエル議長が講演を終える前に株式市場は急騰し、10年物米国債の利回りは低下しました。

パウエル議長のコメントは、PIMCOの基本的な見通しを変えるものではありません。むしろ、パウエル議長がデータ依存の姿勢を最大化した7月会合のメッセージに固執するのではなく、利下げへの扉を明確に開いたことに対する市場の反応は、意外だったとPIMCOはとらえています。

しかし、パウエル議長は、インフレリスクが上振れ方向にあること、そして失業率が安定していることから、労働市場のバランスが依然取れていることを示唆している状況を踏まえ、慎重に進める必要があると強調しました。PIMCOでは、2025年と2026年の両年で、それぞれ50ベーシス・ポイントの利下げを引き続き予想しています。

長期的な政策の枠組みの微調整

講演の後半では、予定されていた5年ごとの見直しの一環として、FRBの金融政策の枠組みの変更の概略を説明しました。これらの変更は、過去のFOMC議事録や記者会見でも予告されていたものであり、PIMCOとしても理に適ったものだと考えています。

今回の変更は、今後数ヵ月、あるいはそれ以上の長期のFRBの政策経路に影響を与えるものではないとPIMCOはみています。なぜなら、修正後の枠組みは、FRBが2012年に確立した「対称的な2%の物価目標」の枠組みに回帰するだけのものだからです。

今回の枠組みの修正は、2025年の現実が、FRBが前回、枠組み検証を実施した2019年から2020年に直面した状況から様変わりしたことを認めるものだと言えます。FRBは最早、政策金利のゼロ金利制約がしばしば拘束力のある制約になるとは予想していません。また、インフレリスクが下方に偏っているとも予想していません。新たな枠組みについての声明では、最大雇用とは、物価が安定的な状況において持続的に達成できる最高水準の雇用と定義されており、雇用が一時的に最大雇用のリアルタイム推定値を上回る場合があっても、物価安定にリスクをもたらすことはないと明記されています。しかし、新たな枠組みでは、意図的に、雇用の「不足」についての具体的な言及は削除されています。

最後に、新たな枠組みの下で、FRBは長期的に平均インフレ率を2%にすることを目標にすることはありませんが、長期的なインフレ期待が2%の目標にしっかりと固定されるよう、断固とした行動を取る用意があるようです。これは、FRBが2012年に導入したインフレ目標政策と同様、インフレ率が持続的に目標水準を下回った場合、FRBはインフレの緩やかなオーバーシュートを容認する可能性があると、PIMCOでは解釈しています。

これらの金融政策の枠組みの変更は理に適ったもので、十分に事前周知されており、二重の使命に対するFRBの永続的なコミットメントが強調されています。

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