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運用戦略

インカム戦略アップデート:波乱のなかで安定を重視

質の高い債券内で高水準の利回りが魅力的な投資機会を提供しているなか、レジリエンス(強靭性)を重視する姿勢を継続しています。

要約

  • 米国の関税政策をめぐって若干の例外や休止、交渉があるとはいえ、貿易に関する不確実性が根強い状況で市場ボラティリティが引き続き高いことから、質が高くグローバルに分散した債券を重視するPIMCOの方針の重要性は益々高まっています。
  • 株式のバリュエーションは依然タイトであり、年後半に短期部分の金利が下がる可能があるなか、中期債は株式、現金の両方に対して引き続き魅力的だと考えています。
  • 柔軟性、グローバルな投資機会と強固な流動性を備えたインカム戦略は、ボラティリティが高まるなかでも好機を生かせる態勢を維持しています。

トランプ政権の劇的かつ変化する関税政策に、市場は混乱しています。PIMCOインカム戦略の運用を、アルフレッド・ムラタ、ジョシュア・アンダーソンとともに担当しているダニエル・アイバシンが、市場のボラティリティと不確実性に関し、債券ストラテジストのエステバン・ブルバノの質問に答え、現下の不確実なマクロ環境における安定の重要性と、利回りが依然高水準にある債券の魅力的な投資機会について論じます。

問:トランプ政権が新たな関税制度を追求するなか、市場は不安定な状況にあります。こうしたマクロ環境において、ボラティリティをどう見ていますか。

答:今回のボラティティは、外生的なショックではなく、意図的な政策と施行スタイルに関連している点で特異的です。トランプ大統領の政策では世界貿易のリセットが重要な優先課題になると広く伝えられていたため、PIMCOでは不確実性を予想していました。トランプ氏は、大統領に就任するよりはるか前の1980年代から関税政策を提唱していました。しかし、PIMCOも、他の多くの人々も、関税の絶対水準と、トランプ政権の計算方法に驚かされました。

マクロ経済に厄介な影響を及ぼす可能性があります。4月2日に公表された極端な水準の関税案を受けて、米国が景気後退に陥り、インフレが高進する可能性が大幅に高まったと考えています。その後の交渉と執行猶予により、熱はやや冷めましたが、貿易関連の不確実性は根強く残る可能性が高いとみています。

PIMCOの基本シナリオでは、相互関税の制限ないし回避を求める多くの貿易相手国との間で、さらなる生産的な交渉が行われる一方、一律10%の基本関税は維持されるだろうと考えています。特定の産業を対象にした的を絞った関税は、継続される可能性が高いでしょう。

4月の市場ボラティリティはきわめて大きく、特に10年物米国債の利回り急騰に多くの投資家が狼狽しましたが、債券利回りは全体に高止まりしており、絶対値でも他の市場セグメントとの比較においても魅力的だと考えています。また、このように不確実性とボラティリティが高い時期には投資機会が生まれると予想しています。

問:市場のボラティリティが急激に高まるなか、市場が有効に機能しているのかやや疑問視されています。PIMCO の見方を教えてください。

答:ただ動きが激しくなっているだけで、市場は有効に機能しています。ボラティリティが高い過去の時期がそうだったように、投資家がリスクの軽減、レバレッジの削減、流動性の確保を目的に、処分しやすいものから手をつけるため、より質の高い資産が早期に売却される現象が見受けられます。これにより、債券市場の質の高いセグメントでスプレッドが拡大する可能性があります。これらのセグメントは、一般的にデフォルト(債務不履行)に強く、格下げやデフォルトという重大なリスクは限定的だと考えています。

しかしながら、レバレッジ比率の高い、クレジット志向の借り手については留意しています。コベナンツが弱くスプレッドがタイトな時期に景気後退ショックが発生すると課題に直面する可能性がありますし、これらの市場にやや慢心が見られるのは間違いありません。

そのため現在のような環境下では、最新の短期経済展望「安定を求めて」で述べたように、質の高い資産を重視し、安定を求めることでレジリエンス(強靭性)を維持するのが賢明であるとの見方を継続しています。

問:この不確実な時期における米連邦準備制度理事会(FRB)の舵取りをどう見ているのか、教えてください。

答:スタグフレーションの可能性に直面し、FRBは難しい立場に立たされています。先ほど申し上げたように、関税によってインフレが加速し、FRBの目標水準を上回る可能性があります。持続的な貿易協議が行われたとしても、インフレ率は長期にわたって高止まりする可能性が高いでしょう。同時に、こうした貿易政策は成長の重石になり得ます。

FRBはトランプ政権の関税やその他の政策の方向性がより明確になるのを待つとみています。市場が秩序ある形で機能し続ける限り、FRBは忍耐強くなれるでしょう。FRB高官は、インフレ率がFRBの目標水準を上回っている時期に、経済をより直接的に刺激する政策をFRB自身が提供しているように見えることについてはきわめて慎重になると考えられます。とはいえ、経済データが急激に悪化した場合、特に失業率が大幅に上昇した場合、FRBは2025年後半、より積極的な利下げに踏み切る可能性があります。

問:このような極端なボラティリティのなかで、投資家は債券とその他の資産について、どのように考えるべきでしょうか。

答:状況は非常に流動的ですが、現時点では、株式のバリュエーションは若干緩和されたものの、特に質の高い債券との対比で歴史的に依然としてタイトな水準にあります。同様に、クレジット・スプレッドは拡大していますが、最近と比べると、比較的狭いレンジにとどまっています。

ここで浮かび上がる興味深い疑問は、リスク資産のバリュエーションがさらに下がらないのはなぜか、ということです。理由の1つは、非常に強力なテクニカル要因です。きつく巻かれたコイルを思い浮かべてください。多くのクレジットがプライベート市場に移されましたが、プライベート市場ではリスクの時価評価が一般的ではありません。もう1つの理由は、最近の市場のボラティリティは明らかにトランプ政権の政策決定によるものであり、投資家はトランプ政権が市場の反応に対して政策をどの程度調整するか確信が持てないことです。

投資家が政権の反応関数をより明確に把握できれば、市場は急回復する可能性があり、特に最近スプレッドが拡大している質の高い分野が有望である点には希望が持てます。実際、トランプ政権が米国債市場の動きにある程度敏感に反応することは見えており、また関税政策の調整を受けて市場がどう回復するかについても見えています。

問:インカム戦略において、デュレーション(金利リスク)とイールドカーブのポジショニングをどのように考えているか教えてください。

答:デュレーションについては概ね中立からややオーバーウエイトとしていますが、市場がオーバーシュートした場合には、金利エクスポージャーをもう少し追加することを検討する方針です。

マクロ経済と政策の不確実性がきわめて高い現状を鑑み、一般的にはイールドカーブの長期部分をアンダーウエイトとする一方、短期から中期の満期を選好しています。また、米国のエクスポージャーに加え、金利リスクのグローバルな分散を継続しており、英国や豪州を選好しています。また、欧州では一部地域が防衛費の増額にコミットしていることから、欧州のデュレーションも注目に値する分野です。

問:インカム戦略において、クレジットとクレジット・エクスポージャーのポジショニングをどのように考えているか教えてください。

答:質の高い資産には引き続き魅力的なリターンの可能性を見込んでいます。特にファンダメンタルなリスクが増大しているようには見受けられない一方で、ある程度の価格の見直しが行われたためです。クレジット・スプレッドは徐々に魅力を増していますが、不確実性が高まっている現状を踏まえ、慎重な姿勢を維持しています。現物社債が大幅に売り込まれるようなことがあれば、クレジット・エクスポージャーを追加する態勢を整えています。現時点では、シニアのストラクチャード商品を選好する傾向にあります。

消費者の資産担保リスクは、概ね底堅さを維持しているとみています。米国の消費者全般の財務状態が基本的に堅固であるためです。長年にわたり住宅価格が上昇した結果、住宅ローン資産プール全体でのローン・トゥ・バリュー・レシオ(LTV)は50%を下回っています。こうした住宅所有者は、自動車ローンの債務者や、学生ローンの連帯保証人となりうる魅力的な見込み客です。また、米国外の魅力的な消費者ファンダメンタルズを活用する機会をグローバルに模索しています。

問:政府系モーゲージ債(MBS)についてPIMCO の見方を教えてください。

答:政府系MBSは、相対的に引き続き魅力的であるように見えます。最近の金利ボラティリティが高まる中で、米国債に対するスプレッドは若干拡大しましたが、この資産クラスは年初来概ね好調に推移し、伝統的なディフェンシブな特性を示しています。政府系MBSのスプレッドが投資適格社債のスプレッドを上回る特異な状況が続いており、米国の政府系機関や米政府の保証の恩恵をうける資産クラスで追加の利回りを獲得することが可能です。

その点に関して、PIMCOの基本シナリオでは、(しばしば政府支援企業、GSEと呼ばれる)住宅ローン機関は、米政府の一部であり続けるだろうと考えています。基本シナリオ以外では、トランプ政権がGSEの民営化を目指す場合、民営化は政府系MBSの質の高さを維持する方法で実施されると考えています。

問:インカム戦略における、エマージング市場のポジションについて教えてください。

答:地政学およびマクロ経済の不確実性が大きいことから、エマージング市場のエクスポージャーは引き続き厳選していますが、利回りと分散の源泉としてエマージング債への若干の配分は維持しており、米国に対して実質利回りが魅力的な国に焦点を絞っています。

中国との貿易摩擦は続くと予想していますが、東南アジアや南米の貿易相手国との交渉は、長期的なパフォーマンスの追い風になる可能性があるとみています。

問:必ずしもインカム戦略の大きな部分を占めているわけではありませんが、通貨はグローバルな投資手段の重要な要素です。米ドル対他通貨をどう見ているのか、教えてください。

答:トランプ政権の政策は、長期的にはさらなるドル安につながる可能性があります。米ドルに対する強い需要は、長らく世界的な準備通貨としての米ドルの地位と、米国の例外主義の両方を反映したものでした。後者については、この数ヵ月で少なくとも部分的に損なわれています。そのため、市場の情勢に応じてさらなるアンダーウエイトを視野に入れつつ、米ドルに対する小幅なアンダーウエイトを継続する傾向にあります(詳しくは、最近のPIMCOの視点「貿易戦争と米ドル」をご覧ください)。世界貿易の調整が進むなか、一握りの先進国とエマージング諸国通貨の通貨取引における相対バリューを活用できる、非常に刺激的な環境にあるとみています。

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