Skip to Main Content
クレジット市場を視る

クレジット市場を視る: データで見るパブリック・クレジット市場の流動性

企業の資金調達市場を俯瞰すると、投資対象によってポジションの構築と解約のしやすさに差があることがわかります。現在の市場環境において、この違いには特に注目すべき点があります。
The Credit Market Lens: A data-driven look at public credit liquidity
クレジット市場を視る: データで見るパブリック・クレジット市場の流動性
Headshot of Lotfi Karoui
Headshot of Michael Puempel
 | 読了まで{read_time}分

要約

  • 市場構造が変化する過程で、社債市場の流動性は向上しています。関連するデータは、市場流動性の向上と参加者層の拡大が進み、取引コストが低下している状況を示しています。
  • ディーラーの債券保有額(在庫残高)については、統計手法の変更と流動性のネットワーク化の進展を背景に、指標としての有効性が低下しています。
  • 流動性を比較する際には、パブリック市場、プライベート・プレースメント、真のプライベート・クレジットを明確に区別することが欠かせません。

投資に関する議論では、数カ月ほど前から流動性のテーマが注目を集めています。なかでも、プライベート・クレジットの一分野である企業向けダイレクト・レンディングに対して、厳しい目が注がれるようになりました。投資の仕組みにおいて、実質的に売却が難しい資産を保有する一方で、毎月もしくは毎四半期の流動性提供にコミットするケースが多いためです。プライベート・クレジット・ファンドの解約制限に関する報道は、リスクが理論的なものにとどまらない状況を裏付けています。

このような環境において、社債が取引されるパブリック・クレジット市場の流動性に関して、議論が継続的かつ並行的に行われています。流動性に課題があるとみる向きの中には(その多くはプライベート・クレジットに積極的な運用会社ですが)、プライマリーディーラーが以前ほど社債の在庫を保有しなくなったことに加え、取引が比較的新しい銘柄の一部に集中していると主張する向きがあります。その一方で、流動性を一定程度評価する立場からは、取引システムや市場構造の進化によって、改善傾向が続いているとの反論が聞かれます。

市場のデータは、後者の見方を明確に裏付けています。市場の「デプス(厚み)」、「ブレス(広がり)」、「トランザクション・コスト(取引コスト)」に関する各種の補完的な指標を見ると、パブリックな社債市場は、世界金融危機以降のどの時点よりも健全な状態にあると考えられます。

図表1:市場の厚みは健全な水準で推移

この図表は、投資適格債市場とハイイールド債市場の「デプス(厚み)」を示したものです(2015~25年)。ハイイールド債市場の方が投資適格債市場よりもデプスの水準が高く(=価格変動幅が大きい)、また動きが大きい傾向が確認されます。2020~22年に顕著に跳ね上がった後、低下に転じています。
出所: TRACE、PIMCO、2026年3月20日現在。
2つ目の「ブレス(市場の広がり)」の計測においては、取引高の詳細な指標を算出します。この指標からも、投資適格債市場とハイイールド債市場の両方において、取引が活発化している状況が確認されます。特定の月に取引がなかった市場インデックスの割合が大幅に低下する一方で、5件以上の取引があった市場インデックスの割合は上昇傾向にあります(図表2、3参照)。

図表2:投資適格債の取引高指標は、市場取引が明確に活発化している状況を示す

この図表は、投資適格債インデックスの中で、特定の月に取引がなかったインデックスの割合と5件以上の取引があったインデックスの割合を示したものです(2015~26年)。取引がなかったインデックスの割合が低下傾向にあるのに対して、5件以上の取引があったインデックスの割合は着実に上昇し、取引の動きが活発化している状況を示しています。
出所: TRACE、ICE-BAML、PIMCO、2026年2月28日現在。
3つ目の「トランザクション・コスト(取引コスト)」の計測においては、ビッド・アスク・スプレッドを活用します。スプレッドは過去最低の水準近辺で推移しています(図表3)。

図表3:取引コストは低下傾向

この図表は、投資適格債とハイイールド債のビッド・アスク・スプレッドの平均を20日移動平均で示したものです(2015~25年)。ハイイールド債の方が投資適格債よりも一貫してビッド・アスク・スプレッドが大きく、また動きが大きい傾向が確認されます。両者とも、一時的に跳ね上がることはあっても、総じて縮小傾向にあります。
出所: TRACE、PIMCO、2026年3月20日現在。
重要な留意点として、この計算は顧客のディーラーに対する売り取引に焦点を当てたものであり、ディーラーを通じて即時の売却を企図する投資家の動きが反映されています。

図表4:プライマリーディーラー調査の時系列データには構造的な断絶が見られる

この図表は、統計手法の変更前後のデータを含む、ディーラーの純在庫残高の推移を示したものです(2001~25年、10億ドル)。在庫残高は2000年代半ばに急増し、世界金融危機の直前にピークに達しました。危機の直後に急減し、近年では、新しい統計手法のもとで、低い水準でおおむね安定的に推移しています。
出所:ニューヨーク連銀、PIMCO、2026年3月11日現在。

この期間中、ポートフォリオ・トレーディング、上場投資信託(ETF)、電子プラットフォームをはじめとするイノベーションの影響によって、流動性はバランスシートに依存する形からネットワークに依存する形に変貌を遂げています。

また、これに関連して、活発に取引されているのは発行直後の「オン・ザ・ラン」銘柄に限定されている、という批判も聞かれます。実際には、ハイイールド債市場(図表5参照)と投資適格債市場の両方において、発行から一定の時間が経過した「オフ・ザ・ラン銘柄」の売買回転率が大幅に上昇している状況が、TRACEのデータにおいて示されています。

図表5:ハイイールド債の「オフ・ザ・ラン」銘柄の売買回転率は改善傾向

この図表は、ハイイールド債インデックスの中で、特定の月に取引がなかったインデックスの割合を示したものです(2015~25年、発行後経過年数別)。取引がなかったインデックスの割合は、発行後経過年数が長い債券の方が一貫して高いものの、いずれのグループにおいても割合が低下傾向にあります。
出所: TRACE、ICE-BAML、PIMCO、2026年2月28日現在。

また、「オフ・ザ・ラン」銘柄の流動性が向上するなかで、歴史的に流動性が最も低いセグメントの1つであった小規模企業が発行する債券は、以前よりはるかに頻繁に取引されるようになりました。

図表6はこの点を示したものであり、特定の月に取引がなかった債券の割合を、「小規模な」発行体(社債発行残高の下位半分)と「大規模な」発行体(同上位半分)で比較しています。この図表から、ハイイールド債市場では、バランスシートの小さい発行体も大規模な発行体と同程度に、市場の価格発見機能の恩恵を受けていることが読み取れます。投資適格債の市場でも、程度はやや小さいものの、同様の傾向が見られます。

図表6:小規模企業が発行するハイイールド債の取引高は増加傾向

この図表は、ハイイールド債の中で、特定の月に取引がなかった銘柄の割合を示したものです(2015~25年、発行体の規模別)。バランスシートの小さい発行体の方が一貫して割合が高いものの、いずれのグループにおいても割合が低下傾向にあります。
出所: TRACE、ICE-BAML、PIMCO、2026年2月28日現在。
このような流動性の拡大は、投資家に限らず発行体や経済全体にとっても重要な意味を持ちます。流通市場における流動性の改善は、スプレッドに織り込まれる非流動性プレミアムの縮小につながり、他の条件が同じであれば、資金調達コストの低下に寄与するからです。

図表7:規則144Aに基づく私募証券の流動性は高く、特にハイイールド債市場において活発に取引されている

この図表は、投資適格債とハイイールド債の月間取引金額を示したものです。(2014~25年、10億ドル)。いずれの市場においても、取引の大半を占めるのは登録債ですが、規則144Aに基づく私募証券の取引金額も着実に増加しています。市場取引は全般に増加傾向にあり、ハイイールド債の取引には比較的大きな変動が見受けられます。
出所: TRACE、PIMCO、2026年2月28日現在。

1TRACE(Trade Reporting and Compliance Engine)とは、米金融業規制機構(FINRA)が米国社債市場を対象に運営する取引報告システムであり、2002年に導入されています。

2 Amihud, Y. (2002年).「Illiquidity and stock returns: Cross-section and time series effects.」Journal of Financial Markets, 5 (1), 31-56.

場所を選択


Americas

Asia Pacific

  • Japan

Europe, Middle East & Africa

  • Europe
Back to top

PIMCO.comを離れる。

PIMCOのウェブサイトを離れようとしています。