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クレジット市場を視る

クレジット市場を視る: 市場の分極化はいつまで続くか

地政学関連の不確実性が続くなか、クレジット市場では全面的なリスクオフの動きは見られず、分極化の傾向が投資の中心的なテーマとなっています。
The Credit Market Lens: A market split, but for how long?
クレジット市場を視る: 市場の分極化はいつまで続くか
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主な結論

  • 市場では引き続き、経済成長よりもインフレのリスクが注目されていますが、仮にこのバランスが変化すればデュレーション(債券ロング)の魅力を高める要因となります。
  • クレジット市場でもクオリティの高い領域では、最近のショックの影響は限定的ですが、一部では証券化商品やCDS対比で割高感が浮上しています。
  • リターンの牽引役は市場全体のパフォーマンスではなく、分極化の動きであり、地域や業種を選別したエクスポージャーが奏功しやすい状況となっています。

グローバル市場では、3月第4週の半ばごろまでは、債券とリスク資産の値動きに顕著な差が観察されていました。短期債の利回りが急激に上昇し、イールドカーブのフラットニングが進むなかでも、クレジットを中心に通貨や株式などリスク資産のプレミアムは小動きにとどまり、市場の注目が引き続き、経済成長の深刻な落ち込みよりもインフレの上昇リスクに集まる様子がうかがえました。

市場がこのような反応を示す背景には、昨年の「解放の日(トランプ関税の発表日)」直後のボラティリティ上昇の経験があると考えられます。足元では、地政学情勢が複雑さを増しているものの、投資家は政策動向を過度に重視せず、ダウンサイド・シナリオに傾斜しすぎない行動をとる傾向が強まっています。しかしながら、直近2営業日の価格動向を見る限り、分極化の動きは弱まり、市場の注目が経済成長の下振れリスクにシフトしている可能性がうかがえます。

中東における軍事衝突の今後の道筋は、依然として極めて不透明ですが、軍事衝突前の状況への回帰が予想よりも遅れた場合、経済成長リスクが広範かつ大幅に再評価される可能性が高いと考えられます。こうした非対称性を踏まえると、引き続きデュレーション(金利リスクの指標:年限が長い債券ほどデュレーション・リスクが高い)のポジションをとる意義は高まります。現在の環境と2022年のインフレ上昇局面を比較すると、なおさらです。(詳細はPIMCOの最新の短期経済展望重層化する不確実性:紛争、信用ストレス、AI」をご参照ください)。足元では、2022年当時よりも労働市場の需給バランスは改善し、資金調達コストは増加し、総需要は抑制されています。

図表 1: 各資産クラスの相関は過去のパターンと概ね整合的に推移

この図表は、米国債利回りの上昇、米ドル建て投資適格債スプレッドの拡大、米ドル相場の下落が同時に起きる頻度を示しています。年初来、このように同時多発的な「米国売り」の局面はほとんど生じていません。この図表は、同時発生の頻度が長期平均の水準を下回り、年初から資産クラス間のストレスが限定的であることを示唆しています。
出所: ブルームバーグ、ヘイバーアナリティクス、PIMCO、2026年3月26日現在。

図表2:ここ数週間、投資適格社債は米政府系MBSをアウトパフォーム

この図表は、MBSのベーシス(カレント・クーポン銘柄)と米ドル建て投資適格社債のスプレッドを比較したものです。いずれも2025年初頭は拡大傾向でしたが、その後年末にかけて概ね縮小しています。直近では、MBSのベーシスが拡大する一方で、投資適格債のスプレッドは概ね横ばいで推移するなど、両者のパフォーマンスの乖離が浮き彫りになっています。
出所: ブルームバーグ、PIMCO、2026年3月26日現在。投資適格債のオプション調整後スプレッド(OAS)とMBSのベーシス(カレント・クーポン銘柄)を比較しています。前者についてはブルームバーグ米ドル建て投資適格債インデックスを、後者についてはファニーメイの30年物MBS(コンベンショナル、プロダクション・クーポン)を参照しています。MBSのベーシスは、5年物と10年物の米国債利回りの平均に対するスプレッドとして計算しています。

図表3: 金利ボラティリティの上昇が政府系MBSのパフォーマンスを下押し

この図表は、MBSのベーシス(カレント・クーポン銘柄)と金利のインプライド・ボラティリティ(MOVE指数)を比較したものです。金利のボラティリティ上昇とMBSのスプレッド拡大は連動する傾向にあり、特に2025年半ばと2026年初頭にはその傾向が強まりました。この図表は、ボラティリティの上昇が概して政府系MBSのパフォーマンスを下押ししていることを示しています。
出所: ブルームバーグ、ICE-BAML、PIMCO、2026年3月26日現在。MBSのベーシス(カレント・クーポン銘柄)とMOVE指数を比較しています。MOVE指数は米国債券市場のボラティリティを表わす指標であり、米ドル建て金利スワップの店頭オプションのバスケットに基づいて算出されています。

図表4: 紛争発生後、クレジットはベータが示唆する以上にS&P500株価指数(時価総額加重平均および均等平均)をアウトパフォーム

この図表は、米ドル建てクレジットとS&P500株価指数(時価総額加重平均および均等平均)のベータ調整後の累積リターンを比較したものです。イラン紛争発生後、クレジットは株式をリスク調整後ベースで概ねアウトパフォームしています。このデータは、両者の差がS&P500株価指数の大型株への集中度の高さだけに起因しないことを示唆しています。
出所: ブルームバーグ、PIMCO、2026年3月26日現在。SPWは均等ウェイトのS&P500株価指数を表わします。

図表5: 欧州市場も同様の傾向

この図表は、ユーロ建てクレジットと欧州株式のベータ調整後の累積リターンを比較したものです。イラン紛争発生後、クレジットのパフォーマンスは株式よりもリスク調整後ベースで比較的底堅く推移しています。これは米国市場と共通する傾向であり、クレジット市場と株式市場が広範にわたってデカップリングしている様子がうかがえます。
出所: ブルームバーグ、PIMCO、2026年3月26日現在。

第2に、米欧のマクロ環境を比較すると、経済成長、インフレ、ポリシーミックスなどの面で欧州の方が悪化傾向にあり、それを反映して米ドル建てクレジットはユーロ建てクレジットをアウトパフォームしています。第3に、欧州の市場では、投資適格の企業クレジットがソブリン・クレジットをアウトパフォームしています。企業クレジットのスプレッドは、イタリア国債やフランス国債の対ドイツ国債スプレッドよりも拡大幅が限定的で、市場では、企業の信用力よりも財政リスクが重視されている様子がうかがえます。原油価格が反落に転じない限り、こうした相対価値の構図が逆転する展開は、想定しにくい状況にあります。

図表6: 中南米の外貨建て債券がアウトパフォームする傾向は2月末以降加速

この図表は、新興国市場の外貨建てクレジットのベータ調整後リターンを地域別に比較したものです。2月末以降、中南米が他の地域をアウトパフォームする一方で、アジアと欧州中東アフリカ(EMEA)のリターンには出遅れ感が見られます。この図表は、新興国のクレジット市場において地域間のばらつきが拡大している状況を浮き彫りにしています。
出所: ブルームバーグ、PIMCO、2026年3月26日現在。2025年12月31日までの24カ月間のベータ調整後リターン。

一点目の投資開始利回りに関しては、年初時点で中南米の債券スプレッドは指数を約80bp上回り、他地域と比べて最も割安な水準にありました。その後、アウトパフォームする傾向が見られたものの、対インデックスの超過スプレッドは依然として60bpに達しています。二点目のコモディティ向けエクスポージャーに関しては、中南米のカントリー・エクスポージャーはメキシコ、ブラジル、アルゼンチンが約半分を占めるため、原油および農産物の価格上昇は同地域にとってプラスに作用しています。また、中南米は、アジアに比べて中東からの原油輸入への依存度が低いという側面もあります。最後のポイントとして、中南米地域は歴史的に米国の経済成長との連動性が高く、各国が国内問題を抱えるなかでも、米国経済は他の先進諸国をアウトパフォームする可能性が依然として高いという事実が、プラス要因となります。

図表7: PIMCOの推計ではBDCによるBSLの保有残高は約210億ドルであり、その大部分が非上場BDCのポートフォリオに含まれる

この図表は、BDCによるBSLの推計保有残高を示したものです。エクスポージャーの大半を非上場BDCが保有する一方で、上場BDCの保有は限定的にとどまります。全体として、ローン市場全体に占めるBDCの保有額はわずかにすぎません。
出所: PitchBook LCD、PIMCO、2025年9月30日現在。

この規模のエクスポージャーであれば、ストレスが生じた場合でも、BSL市場で大規模な強制売却が起こる可能性は低いと考えられます。解約請求は実体を伴う動きであり、非上場BDCの間で広がりを見せていることは確かですが、BSL市場への直接的なフロー主導の波及リスクは依然として限定的です。

もっとも、ローン市場には、ソフトウェア・セクター向けの大規模なエクスポージャーを筆頭に、独自の本質的な課題が存在するため、プライベート・クレジット関連のフローとは無関係に、パフォーマンスには下押し圧力が生じています。

図表8: 昨年の投資適格債の純発行額に占める銀行債の割合は5%にとどまり、世界金融危機以降で2番目に低いシェアとなる

この図表は、米ドル建て投資適格債の純発行額に占める銀行債の割合の推移を示しています。近年、銀行債のシェアは着実に低下し、2025年には世界金融危機以降で2番目に低い水準に達しています。この図表は、投資適格債全体の起債市場における銀行債の割合の低下を浮き彫りにしています。
出所: JPモルガン、PIMCO、2025年12月31日現在。

図表9: 年初来、銀行シニア債は投資適格債インデックス全体をアンダーパフォーム

この図表は、投資適格債インデックス対比での銀行シニア債のスプレッドのパフォーマンスを示しています。2026年に入って、銀行シニア債は投資適格債市場全体をアンダーパフォームしています。銀行債のスプレッド比率は対象期間の大部分において1を下回り、相対的なパフォーマンスの弱さを示唆しています。
出所:ブルームバーグ、PIMCO。2026年3月25日現在のデータ。

図表10: 総資産残高に占める非預金取扱金融機関向け融資の割合は、米国の方がユーロ圏よりも大きく上昇している。

この図表は、銀行の総資産残高に占める非預金取扱金融機関向け融資の割合を、米国とユーロ圏の間で比較したものです。この割合は、米国では過去10年で着実に上昇しているのに対して、ユーロ圏では比較的安定的に推移しています。この図表は、銀行とプライベート市場の相互関係が、地域間で一層乖離している様子を示しています。
出所: ECB、FRB、PIMCO、2026年1月31日現在のデータ。総資産残高に占める非預金取扱金融機関向け融資の割合(米国の銀行)と、その他金融仲介業者向け融資(リバースレポを除く)の割合(ユーロ圏の銀行)を比較しています。

米欧間のこのようなコントラストは、米国においてプライベート・クレジットおよびプライベート市場全般が急速に成長している状況と、欧州において銀行が非金融系企業向け直接融資の分野で、引き続き中心的な役割を担っている状況を反映しています。別の言い方をすると、米国では、プライベート・クレジットの運用会社にとって、流動性とレバレッジを提供する銀行の役割が増しているのに対して、欧州では、そのような相互関係は限定的にとどまると言えるでしょう。

本稿は、マイケル・パンペル、ガブリエル・カゾビエイユとの共同執筆によるものです。

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