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不動産市場の展望

曲がっても折れない:経済の不確実性の中での不動産投資

規律ある運用、積極的な価値創造、そして各国・地域の知見を通じて持続的な収益を追求します。

主な結論

  • 2025年の商業用不動産市場を形作っているのは、地政学的緊張、根強いインフレ、予測不可能な金利軌道に起因する構造的な不確実性です。
  • 幅広いセクター配分とモメンタム主導の戦略を柱とする従来型のアプローチは、今日の環境では不十分であることが証明されつつあります。
  • 不確実性が増す環境では、投資家は選別姿勢を強め、持続可能なインカムをもたらす投資先を優先し、横ばいないし低迷する市場でもパフォーマンスを追求すべきだとPIMCOは考えます。デジタルインフラ、集合住宅、学生寮、物流施設、生活必需品ベースの小売などのセクターが、比較的、回復力があるとみています。

最近まで、商業用不動産は待望の回復に向かう態勢を整えているように見えました。しかし、2025年は新たな現実を露呈しました。不確実性が構造的なものになっているのです。貿易摩擦、インフレ、景気後退リスク、金利のボラティリティは市場を不安定にし、意思決定を遅らせています。従来の戦略、つまりモメンタム主導の広範なアプローチ、キャップレートの圧縮、賃料の伸びに頼る戦略は、もはや安定した基盤にはなりません。各国・地域の知見(ローカル・インサイト)と卓越したオペレーションに根差した規律ある投資プロセスが、かつてなく重要になっています。

PIMCOが最近発表した長期経済展望「分断の時代」では、世界秩序が揺れ動く中、貿易や安全保障同盟の変化によって地域リスクは不均一なものになると論じました。アジア、特に中国では地政学的緊張と関税問題が支配的であり、債務が増大し人口動態が悪化する中で、低成長軌道に移行しつつあります。米国では、根強いインフレ、政策の不確実性、政治的な不安定さなどが主な逆風になっています。欧州はエネルギーコストの高騰と規制の見直しに直面していますが、防衛費とインフラ支出の増額が追い風になる可能性があります。

セクターや地域ごとのリスクのばらつきを踏まえると、従来のリターンの源泉は信頼性が低下しており、特にレバレッジがマイナスの環境下ではそう言えます。強靭(レジリエント)なインカムと堅固なキャッシュ利回りを実現するには、地域の事情に精通するとともに、エクイティ、開発、デット・ストラクチャリング、複雑なリストラクチャリングに関する専門知識を備えたアクティブ運用がますます必要になるとPIMCOは考えます。投資では、横ばいないし低迷する市場においても収益実現を目指すべきです。

デットは、長らくPIMCOの不動産プラットフォームの基礎を成していますが、その相対価値により、引き続き高い魅力を維持しています。昨年の不動産展望「困難に立ち向かう:現在の商業用不動産市場における課題と機会」で概説した通り、米国では約1兆9,000億ドル、欧州では約3,150億ユーロの融資が 2026年末までに返済期限を迎えると見込まれています

こうした返済期限の波は、数多くのデットの投資機会を生み出すとみています。投資機会は、ダウンサイドの軽減を提供するシニア・ローンから、ジュニア・デット、レスキュー・ファイナンシング、ブリッジ・ローンなどのハイブリット・キャピタル・ソリューションまで多岐にわたります。これらは、追加的な時間を必要とする出資者と、資金調達ギャップに対処する所有者や貸し手向けに設計されています。

また、土地ファイナンス、トリプルネットリース、安定したキャッシュフローと強靭性を備えた一部のコアプラス資産など、クレジットに類した投資にも機会があるとみています。エクイティ投資は、効果的な運用、魅力的で安定したインカム利回り、そして長期的トレンドが明確な競争優位をもたらす例外的な場合に限定すれば、投資機会があると見ています。

学生寮、手頃な価格の(アフォーダブル)住宅、データセンターは、投資家から安全な逃避先と見なされ、安定したキャッシュフローやマクロ経済の変動に耐えうる可能性など、インフラに似た性質を提供すると考えられています。

現在のサイクルにおいて、成功するかは市場モメンタムではなく、規律ある執行、戦略的な俊敏性、深い専門知識にかかっていると考えています。

これらの投資に向けた示唆は、5月にカリフォルニア州ニューポートビーチで開催されたPIMCOの第3回年次グローバル不動産投資フォーラムの知見を踏まえたものです。PIMCOの短期経済予測会議(シクリカル・フォーラム)、長期経済予測会議(セキュラー・フォーラム)と同様、このイベントでは世界中の投資プロフェッショナルが一堂に会し、商業用不動産市場の短期および長期の見通しについて議論しました。2025年3月31日現在、PIMCOは世界最大級の商業用不動産投資プラットフォームを有し、300人以上の投資プロフェッショナルが、世界の不動産の公開、非公開の不動産デットおよびエクイティの幅広い戦略で、約1,730億ドルにのぼる資産を運用しています

マクロの視点:地域差の拡大とニッチ市場の台頭

マクロ経済状況のばらつきが、世界の商業用不動産の地形図を塗り替えています。金融政策、地政学的リスク、人口動態の変化といった主要な要因は、もはや同調した動きをしていません。そのため、より地域に密着し、より選別的で、より現地の実情に合わせた戦略をとる必要があります。

米国では、金利の不透明な道筋が長い影を落としています。借り換えの動きは、特にオフィス、小売の各セクターで急激に減速しています。取引量は引き続き低調で、バリュエーションも軟化しています。経済成長の低迷が続くと予想される中、迅速な回復を期待する向きはほとんどありません。来年末に返済期限を迎える予定の1兆9,000億ドルの債務は、リスクの源泉であると同時に、資本力のある買い手にとっては潜在的なチャンスにもなります。

欧州は、異なる課題に直面しています。成長は、パンデミック前から既に鈍化していました。現在、人口の高齢化と生産性の低下により、成長のペースはさらに減速しています。インフレは依然として粘着的で、信用は逼迫しており、ウクライナでの戦争が引き続きセンチメントの重しになっています。それでも、いくらか回復力(レジリエンス)につながりそうな要因があり、防衛費とインフラ支出の増加は、一部の国で追い風になる可能性があります。

アジア太平洋地域では、日本、シンガポール、豪州など、法的な明確性とマクロ経済の予測可能性が高いとみなされる、より安定した市場に資金が流入しています。一方、中国は引き続き圧力にさらされています。中国の不動産セクターは依然として脆弱で、債務水準は高く、消費者信頼感は不安定です。アジア太平洋地域全体で、投資家は、透明性、流動性、人口動態の追い風を重視する姿勢を強めています。

また、米国やアジア太平洋地域を犠牲にして欧州に利益をもたらす可能性のある、投資の再配分の兆候も見受けられます。こうした変化は、大陸横断的な戦略への資金配分を広範に縮小し、地域重視型の投資に回す動きを反映したものです。

世界は分断された状況にありますが、優れた見識を有する投資家には、この複雑さは潜在的な機会をもたらします。

セクター別の見通し:仮説より分析を重視

商業用不動産には、どのような影響があるのでしょうか。分断された不確実な環境において、セクター全体を画一的にとらえることはもはや有効ではありません。不動産サイクルは同調しなくなり、資産クラス、地理、さらにはサブマーケットごとにばらつきがあります。その意味するところは明快です。投資家はきめ細かなアプローチを採用しなければなりません。

成功は、詳細な資産レベルの分析、実践的な管理、そして現地市場のダイナミクスへの深い理解にかかっています。それはまた、マクロの変化と不動産のファンダメルズが交差する領域を認識することを意味します。例えば、欧州の防衛力増強は、特にドイツと東欧において、物流、研究開発施設、製造施設、住宅に対する需要に拍車をかける可能性が高いと考えられます。

投資家にとって重要なのは、持続的な収益をもたらし、ボラティリティに耐えることができる、特定の資産、サブマーケット、戦略に特化したアプローチです。このサイクルでは、アルファの機会がベータに賭けるよりも重要になるでしょう。以下では、そうした精度が報われる可能性のあるセクターを取り上げます。

デジタルインフラ:信頼性の高い需要、高まる規律

デジタルインフラは現代の経済の屋台骨となり、機関投資家の重点的な投資先になっています。人工知能(AI)、クラウド・コンピューティング、データ集約型アプリケーションの急増により、データセンターはニッチな資産クラスから戦略的インフラへと変貌を遂げました。ただ、これにより、電力の制約、規制上のハードル、資本集約度の高まりなど、新たな課題が浮上しています(図表1を参照)。

図表1:急増するデータセンターへの支出

Bar chart showing annual capital expenditures by Amazon, Microsoft, and Google on data centers from 2015 to 2026 (projected). Spending rises steadily across all three companies, with a notable 56% increase from 2023 to 2025. Amazon leads in total spend, followed by Microsoft and Google. The chart illustrates the rapid growth in digital infrastructure investment driven by AI and cloud computing demand.

出所:ブルームバーグ、ゴールドマン・サックス、アマゾン、マイクロソフト、アルファベット、PIMCO、2025年5月2日現在。

注:アマゾンの公表収益は、外国為替の変動の影響を反映していますが、同社はAmazon Web Services, Inc.からの収益に対する為替の影響については個別に開示していません。グーグルの公表収益も為替変動を反映していますが、同社も Google Cloudの収益に対する為替の影響については個別に開示していません。

本資料は説明のみを目的としたものです。本資料内で説明された傾向が継続する保証はありません。

グローバル市場全体では、問題は需要そのものではなく、どこでどのように需要を満たすかです。バージニア州北部やフランクフルトなど成熟したハブ都市では、アマゾンやマイクロソフトなどのハイパースケーラーが、特にAI推論やクラウドの作業負荷に合わせた施設用に何年も前から用地を確保しています。こうした資産は、レジリエンスと価格決定力をもたらす可能性があります。しかし、多くの場合、低コストで電力が豊富な地域に立地するより計算量が多いAI訓練に特化した施設では、送配電網の信頼性やスケーラビリティ、長期的なコスト効率に関連するリスクがあります。

コア市場が需要の増加で逼迫する中、資本は外側へと広がっています。欧州では、電力不足と認可の遅れに加え、低遅延とデジタル主権要件により、従来のハブ都市から、マドリードやミラノ、ベルリンといった新興のTier2およびTier3の都市への転換を余儀なくされています。これらのデータセンターは成長の可能性を秘めていますが、インフラの格差、規制の枠組みの違いや実行リスクにより、より実践的で地域に即したアプローチが求められています。

アジア太平洋地域では、安定性とスケーラビリティに重点が置かれています。日本、シンガポール、マレーシアなどの市場は、堅牢な法的枠組みと制度の厚みに支えられ、資本を引き付け続けています。ここでは、コストが上昇し、政策の監督が厳格化される中でも、投資家はハイブリッドな作業負荷をサポートし、進化する環境・社会・ガバナンス(ESG)の慣行に対応できる資産を優先しています。

デジタルインフラが経済パフォーマンスを左右する屋台骨になるにつれ、成功の鍵は容量だけでなく、規制や運用の複雑さを如何に乗り越え、土地や電力の制約を管理し、レジリエントかつスケーラブルで、分散・データ主導型のエネルギー効率の高い未来に向けて、最適化されたシステムを構築するかにかかっています。

居住用セクター:永続的な需要、乖離するリスク

居住用セクターは、インカムの可能性と構造的な需要を引き続き提供しています。都市化、高齢化、世帯構造の進化など、人口動態の追い風が、長期的な需要を引き続き支えています。しかしながら、投資環境は分断されています。規制の枠組み、手頃な価格への圧力、政策介入には大きなばらつきがあるため、投資家は慎重に検討する必要があります。

住宅価格の高騰、住宅ローン金利の上昇、賃借人の嗜好の変化に支えられ、賃貸住宅需要は、世界市場全体で引き続き旺盛です。こうした動向は賃借人の賃貸期間を延長させ、集合住宅および賃貸専用物件(BTR)、社宅などへの関心を高めています。

日本は、都市部への移住、手頃な価格の賃貸住宅、制度的な厚みという要素が揃っている点で際立っており、長期の住宅投資向けの安定的で流動的な市場を提供しています(図表2を参照)。

図表2:都市中心部に移る日本の人口に追随する資本

Stacked bar chart showing real estate capital allocation across five Japanese cities – Tokyo, Osaka, Nagoya, Fukuoka, and others – from 2015 to 2025 (year-to-date). Tokyo consistently receives the largest share, with its percentage of total allocation rising steadily over the period. The chart highlights the concentration of investment in urban centers, particularly Tokyo, amid demographic shifts and urban migration.

出所:アーバンランド・インスティテュート、MSCI Inc、RCA、サヴィルズ、2025年5月現在。本資料は説明のみを目的としたものです。本資料内で説明された傾向が継続する保証はありません。

しかし、市場は一枚岩ではありません。一部の国では、機関投資家向けプラットフォームが急速に拡大しています。一方で、手頃な価格で入手できないことへの懸念から、規制が問題になっている国もあります。具体的には賃料規制の強化や、用途地域の制限、そして機関投資家による賃貸経営に対する政治的監視の強化が挙げられます。特に住宅の入手しやすさが議論の焦点になっている地域では、特にその傾向がみられます。

学生寮は、入学者数の増加と限定的な供給に支えられ、魅力的なニッチとして浮上しています。専用の学生寮は、予測可能な需要と国際的に移動する学生層の拡大の恩恵を受けることができます。構造的な供給不足、良好な人口動態、特に英語圏の国々における高等教育の永続的な魅力が、この資産クラスを引き続き支えています。

それでも、地域ごとのダイナミクスは重要です。米国では、一流大学の近隣地域での需要は根強いものの、ビザ発給の厳格化や歓迎しない政治ムードを背景に、将来の留学生の流入が抑制されかねないとの懸念が高まっています。一方、英国、スペイン、豪州、日本などでは、ビザの優遇や大学間ネットワークの拡大に支えられて、需要が高まっています。

居住用セクターについては、投資家はグローバルな観点からの確信と、現地に精通した情報を組み合わせる必要があります。運用のスケーラビリティ、規制への対応、人口動態の洞察がますます重要になっています。これらは必要不可欠でありながら進化する複雑なセクターにおいて、持続的な価値を引き出すうえで欠かせないものです。

物流:絶え間ない躍動

倉庫や配送センター、物流拠点で構成される産業用不動産は、現代の経済の要です。かつては実用的な辺境の地に過ぎなかった同セクターは現在、世界貿易、デジタル消費、サプライチェーン戦略の中心に位置づけられています。その魅力は、電子商取引の拡大、ニアショアリングによるサプライチェーンの再構築、そして迅速な配送への絶え間ない需要の高まりを反映しています。近年の急速な賃料上昇は鈍化しているものの、契約更新を迎える賃貸人は引き続き強い立場にあります。機関投資家の資本は、特に都市部の物流や冷蔵倉庫などのニッチなセクターに流入し続けています。

ただ、同セクターの見通しは、地理的な条件やテナントの属性によって左右されるようになっています。地域全体では、いくつかのテーマが繰り返し見られます。一つ目は、進化し続ける交易路です。例えば米国では、東海岸の港湾や内陸のハブ都市が、国内回帰(リショアリング)や海上ルートの変更の恩恵を受けています。これは、より広範でグローバルな傾向を反映しています。港湾であれ、鉄道の発着点であれ、都市中心部であれ、主要な物流ネットワークに近い資産はプレミアムがつくということです。しかし、こうした好立地でも、賃貸の勢いは鈍化しつつあり、テナントは慎重な姿勢を強め、意思決定を遅らせ、一部の地域では新規の供給が需要を上回る恐れが出てきています。

二つ目は、都市の需要が物流の形を変えつつあるという点です。欧州とアジアでは、テナントは消費者により近い拠点や持続可能性を優先しており、既存地活用開発、内装や設備(インフィル)、グリーン認証を受けた施設への関心が高まっています。ただ、規制上のハードル、需要の不均衡、建設コストの上昇により、投資家の忍耐力が試されています。日本や豪州では引き続き物流施設の需要が堅調に推移している一方で、東京やソウルなどの都市では、長期的なファンダメンタルズは依然良好とはいえ、供給過剰により賃料の伸びが抑制されています。

最後に、投資家はより慎重に選別をするようになっています。一等地にあるコア資産は引き続き強い関心を集めていますが、二番手の資産はますます厳しい目にさらされています。貿易政策の不確実性、インフレ、テナントの信用リスクを背景に、立地とリースの両方で質を重視する姿勢が強まっています。産業のファンダメンタルズは引き続き底堅いものの、セクターが成熟するにつれ投資シミレーションも成熟し、投資判断もよりきめ細かく、地域ごとに特有なものになってきています。

リテール:様変わりした環境で際立つ選択的な強さ

リテール不動産は、必要性、立地、適応性によって特徴づけられる、選択的なレジリエンスの局面に入っています。かつて商業用不動産の弱点であった同セクターは、生活必需サービスを基盤とする商業施設の不変の魅力に支えられ、基盤を固めています。食料品店を中心とした商業施設、郊外型ショッピングセンター(リテール・パーク)、ゲートウェイ・シティの高級小売店が、現在同セクターの中核を成しており、安定した収益性とインフレ対策の可能性を提供しています。金利が高く慎重な投資環境の中で、これらの資産は華やかさではなく信頼性が高く評価されています。

このセクターは、明らかに二極化しています。一方は、安定した客足、長期リース契約、新規供給が限定的な優良資産であり、テナントの再配置や複合用途の再開発を通じて資本を引き付け、価値創造の余地を提供し続ける特性を有しています。他方、構造的な陳腐化やテナントの解約に加え、市場での魅力が低下している二番手(セカンダリー)の資産があります。

こうした乖離は、地域ごとにみられます。米国では、食料品店を中心とするショッピングセンターとリテール・パークが、一貫した消費者需要と防御的なリース構造に支えられて、回復力を維持しています。対照的に、百貨店に依存したモールや弱体化した郊外の店舗形態は、引き続き長期的な衰退に直面しています。ただ、高級ブランドが一部の都市で繁華街の旗艦店を取り戻すなど、改革の兆しが見え始めています。

欧州でも、質への逃避が見られます。食料品店やその他の生活必需品を中心とした小売りセンターはアウトパフォームしていますが、嗜好品を扱う店舗形態は依然として厳しい状況が続いています。この地域では、オムニチャネルの小売業が全面的に受け入れられており、一部の家主は未使用のスペースを、配送先までの最後の物流拠点に転換しています。

アジアでは、観光客の増加により日本や韓国の繁華街の小売店は復活していますが、インフレが進み嗜好品消費がおぼつかない中、郊外のショッピングモールの業績はやや鈍化しています。貿易摩擦が状況をより複雑にしています。

オフィス:いまだに底を探るセクター

オフィス・セクターでは、緩慢で不均等な再調整が続いています。高止まりする金利と信用の引き締まりが、遊休スペースと進化する職場規範という課題を一層深刻化させています。リースと利用率は安定化の初期の兆候を示していますが、回復はいまだまだらです。優良資産と二番手の資産の分断は激しく、構造的な断線ができています。

ビジネス中心地区のクラスAのビルは、出社の義務化や人材獲得競争、ESGの優先課題に支えられ、引き続きテナントを引き付けています。こうした資産は、柔軟性、効率性、そしてブランド力を提供しています。古くて適応性の低い建物は、大規模な資本投下による再活用がなされない限り、陳腐化するリスクがあります。

こうした二極化は、グローバルな現象です。米国では、ニューヨークやボストンなどの沿岸都市でリースが持ち直す一方、南西部のサンベルト地域では供給過剰が重くのしかかっています。返済期限を迎える大量の債務が迫り来ることで、資産が軟化する恐れがあり、資本の借り換えには依然慎重です。今後の見通しは、緩慢な吸収と選別的な価格改定、そして非コア資産では苦境が続くというものです。

欧州では、ロンドン、パリ、アムステルダムなどの都市でクラスAの物件不足が顕在化しています。しかし、規制、建設コスト、ESG基準の引き上げにより、新規開発は制約されています。投資家は、包括的な戦略から資産固有の引き受けにシフトしています。

アジア太平洋地域は、相対的に回復力の高さを示しています。資本は、日本、シンガポール、豪州など、透明性と安定性が高く評価されている国・地域に引き続き流入しています。文化的規範と人材獲得競争に支えられ、オフィスへの復帰が進んでいます。需要は引き続き質の高い資産に集中しています。

それでも、同セクターは構造的な過剰に直面しています。機関投資家のポートフォリオでは、前の景気サイクルから引き継ぐ形でオフィスに多額の配分がされたままです。こうした過去の負債の影響は、優良資産であっても、価格の回復を制約する可能性があります。「オフィス」という概念そのものが再定義される中、成功はマクロ経済のトレンドよりも、実行力にかかってきます。

不動産の次の局面を乗り切る

商業用不動産がより複雑で選別的なサイクルに入るにつれて、投資の重点は広範な市場へのエクスポージャーから、エクイティとデット両方での的を絞った執行に移りつつあります。マクロ経済のばらつき、セクターごとの再編、資本規律により、投資家が機会を評価し、リスクを管理する方法が変わりつつあります。

こうした環境下での成功は、ローカルの知見とグローバルな視点を統合し、構造的トレンドと循環的なノイズを見分け、一貫性を持って実行することにかかっていると考えています。課題は、単に市場に参加することではなく、市場を明確な方針で的確に見極めて進むことにあります。

進むべき道は狭まるかもしれませんが、俊敏に適応する者には引き続き道は開かれてます。戦略を永続的な需要に合わせ、規律を持って複雑さを切り抜ける投資家は、機会を見い出し、長期的に考え抜かれた成果を収められる可能性があります。

PIMCOの不動産ソリューションの詳細については、こちらをご覧ください。


1 米モーゲージ銀行協会、2025年3月現在。

2「安全資産」とは、市場の混乱期にも価値が不変であるか高まると予想される投資を指します。投資家は、市場の下降局面において損失リスクを限定する目的で安全資産を求めます。全ての投資にはリスクが伴い、価値は下落する場合があります。

3 すべてのデータは2025年3月31日時点のものです。すべての統計は、PIMCOとPIMCO Prime Real Estateの両事業を合わせたものを表しています。資産には、PIMCO Prime Real Estate(「PIMCO Prime」)が管理する923億ドルの資産が含まれます。PIMCO Primeの運用資産残高(AUM)には、未コール分のコミットメントも含まれています。PIMCO Prime Real EstateはPIMCOのグループ会社です。PIMCO Prime Real Estate LLCはPIMCO LLCの完全子会社であり、PIMCO Prime Real Estate GmbHおよびその関連会社はPIMCO Europe GmbHの完全子会社です。PIMCO Prime Real Estate GmbHは、PIMCOとは別に運営されています。PIMCO Prime Real Estate はPIMCO LLCの商標であり、PIMCOは、アリアンツ・アセット・マネジメント・オブ・アメリカ・エルエルシーの米国及びその他の国における商標です。

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