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長期経済見通し

分断の時代

世界秩序が揺れ動く中、投資家はグローバル市場に分散し、魅力的で質の高い利回りを活用することで、ポートフォリオの強化を目指すことができます。

投資へのヒント

  • 利回りの優位性:PIMCOでは、投資家は強靭なポートフォリオを構築することができる、質の高い債券の利回りの優位性を活用することを引き続き提唱しています。対照的に株式のバリュエーションは依然過大評価されており、これは大規模な価格調整の前に見られる水準です。
  • グローバルへの分散がカギ:インフレ率、成長率、貿易の見通しの乖離により、広範でグローバルな分散投資の必要性が高まっています。先進国とエマージング諸国のどちらも、ポートフォリオのリスクを分散し、魅力的なリターンを追求することができる豊富な投資機会を提供しています。
  • ダイナミックな市場がアクティブ投資の機会を創出:低格付けで景気に敏感な領域でリスクが高まる中、アクティブ運用の投資家は、長期よりも魅力的な中期債を選好し、また公開市場と非公開市場のバリュエーションの差を利用し、アセット・ベースド・ファイナンスにおける投資機会を捉えることができます。
The Fragmentation Era
今後5年間に、米ドルが世界の準備通貨としての支配的な地位を失う可能性はほぼないと考えています。

しかし、過去の複数年にわたるドル・サイクルを反映して、ドルの弱気相場の可能性はあります。政策や安全保障の優先順位が変われば、米国とその他の資産に対する世界の相対的需要が変わる可能性があります。海外投資家がヘッジなしのドル・エクスポージャーに対する許容度を見直す中では、特にそうなる可能性が高いでしょう。

分断が進む世界で(中国が開発したデジタル決済プラットフォームの「Mブリッジ」等の)地域通貨協定が拡大し厚みを増すにつれて、米ドルは国際的な決済市場でシェアを失い続けるとPIMCOでは予想しています。グローバルなポートフォリオの調整が徐々に進みリスク資産に分散されるのに伴い、緩やかな米ドル離れが続く可能性があります。

肥大化する債務

債務は過去最高に近い水準にあるものの、ほとんどの先進国では依然として持続可能です。顕著な例外が日本、米国、フランスで、債務が長期的に持続不可能な軌道で拡大しており、昨年よりさらに増加しています(図表1を参照)。金利コストの上昇もあって、赤字はパンデミック前を上回る水準にとどまる可能性が高いでしょう。

図表1:例外はあるが、多くの国で持続可能に見える債務

出所:PIMCO算出、ブルームバーグ、国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し」注:このグラフは、G10(+オーストラリア、ニュージーランド、スペイン、ベルギー)の債務の対GDP比の単純な予測を示しています。この予測では、プライマリーバランスがIMFの予測どおりに推移し(2029年まで、以降横ばい)、インフレ率は目標水準、実質GDP成長率はトレンド並み、金利は2025年5月6日時点で金融市場に織り込まれたフォワードレートに沿って推移(2029年まで、以降横ばい)すると仮定しています。単純化のために各国の加重平均の満期は7年と仮定します。IMFの米国の予測については、2017年のトランプ減税の延長を考慮するよう調整しています。

しかしながら、これらは一時的ではなく、慢性的な問題に見受けられます。PIMCOでは、突然、財政危機に陥る事態は予想していません。むしろ、2023年と2025年の米国、2022年の英国でより急激に見られたような、市場ボラティリティが一時的に高まることを予想しています。PIMCOの基本シナリオでは、米国債は米ドルの準備通貨の地位に支えられ、向こう5年間「汚れたシャツの中で一番綺麗なシャツ」、つまりソブリン債の中では最善の選択肢であり続けると考えています。

米国、ドイツ、そして一部の先進国の財政政策は、1年前のPIMCOの予測よりも緩和される可能性があります。トランプ2.0の財政パッケージにより、米国の赤字と債務は従来の政策予測以上に拡大する可能性が高いでしょう。ただ、全体的な財政余力には依然として制約があり、将来の景気後退に対応する余地は限られています。とはいえ、中央銀行の利下げ余地は、パンデミック前の10年間に比べてはるかに大きくなっています。

インフレ率については、関税による短期的な上昇はあるものの、長期的にはFRBの目標水準に戻ると予想しています。FRBは中立金利(約3%)程度まで利下げを実施し、景気後退局面では中立金利を大幅に下回る水準まで政策金利を引き下げ、必要とあればゼロ金利にすることもありうると予想しています。

歴史的に米国が向こう5年間に景気後退に陥る確率は約3分の2とされていますが、現状を鑑みるとその確率はもっと高くなるでしょう。

世界経済およびインフレ見通しの変化

米国以外の主要先進国は明らかな成長課題に直面しています。一方、エマージング諸国は慎重な債務管理によって支えられていますが、世界貿易の変化や先進国の政策の影響も受けています。

欧州

ユーロ圏の成長率は、人口動態の悪化と生産性の伸び鈍化が重しになり、パンデミック前の約1%から、向こう5年は約0.5%に減速する可能性があるとみています。ユーロ圏は、世界のテクノロジー競争に遅れをとり、中国との厳しい競争に直面しており、不利な貿易環境の中でエネルギー・コストの高騰に苦しんでいます。ドイツが防衛費とインフラ支出の増額に方向転換したことは重要ですが、他国が追随する可能性は低いでしょう。

インフレ率については、脱グローバル化とインフレ期待の上昇によりパンデミック前の1%の水準に戻る可能性は低いものの、欧州中央銀行(ECB)の目標である2%を下回る水準に落ち着く可能性が高いとみています。均衡金利は低水準にとどまり、現在の名目水準である約2%を下回る可能性が高いと考えています。

中国

中国経済は、債務が増加し人口動態が悪化する中で、低成長軌道に移行しつつあります。不動産やインフラ支出などかつての成長推進要因は、消費、製造業、テクノロジーを強化する政策に取って代わられつつあり、債務をテコにした好況から、イノベーション主導の持続可能な成長へと意図的な転換が図られていることがうかがえます。

しかし、デフレ圧力と構造的な制約は、成長が緩やかな軌道にとどまることを示唆しています。中国は依然として世界の製造業の中心地ですが、貿易と地政学的な緊張により、輸出が成長エンジンになるかはわかりません。

エマージング市場

米国発の新たなリスクが世界の他の地域のリスクプレミアムの上昇に直結するのかという疑問から、歴史的に先進国の政策金利とエマージング諸国の借り入れコストがいかに密接にかかわってきたかが想起されます。リスクは明らかですが、心強いことに、多くのエマージング諸国は、管理可能な債務水準を維持しており、潜在的な逆風を乗り切る態勢を整えています。

米国債の保有を増やしているステーブルコインの発行者などのデジタル通貨の台頭は、資本フローの進化を浮き彫りにしています。このエコシステムが成熟すれば、エマージング諸国の資本フローと通貨管理が再構築される可能性があります。

基本シナリオへの潜在的な混乱要因

PIMCOでは、確率は低いものの、長期経済展望の基本シナリオを根本的に揺るがす可能性がある潜在的な混乱要因を警戒しています。代表的なものは以下のとおりです。

  • 加速するAI関連の創造的破壊-AIの進歩が予想以上の速さで起こり、GDP成長率と生産性の伸びが加速される可能性があります。PIMCOの基本シナリオでは、新たなAI大規模言語モデルの影響が全て現れるのには、時間がかかると引き続き見ています。
  • FRBの信認の喪失-最高裁判所の判決や、議長が物価安定を支持する意思を示さないことによりFRBが信認を失う可能性は低いものの、もし信認が喪失されるようなことがあれば深刻なものになりえます。それがインフレ期待や債券利回りの急上昇、ドルの急落、リスク資産の広範な売りを引き起こす可能性があります。
  • 米国例外主義2.0-米国の経済と金融が世界の他の地域をアウトパフォームしているというストーリーは、今年に入って薄れています。とはいえ米国は2025年の初めは、力強い生産性、テクノロジー分野でのリーダーシップ、そして厚みのある資本市場が一貫した利益成長を後押ししていました。米国のGDP成長率は諸外国を少なくとも1%ポイント上回っているため、こうした強みは持続する可能性はあります。貿易と財政の不確実性が緩和されれば、米国の例外主義が再浮上するかもしれません。

図表2:絶対値ベースでも米国債との相対価値ベースでも割高に見える株式

出所:ブルームバーグ、ロバート・シラー・オンラインデータ、グローバル・ファイナンシャル・データ、PIMCO、2025年5月31日現在。すべてのバリュー指標は、S&P500指数との対比で示しています。実質株式利回りレシオは、過去10年間の平均実質利益を直近の株価で割ったものです。30年物実質債券利回りは30年物米物価連動債(TIPS)の利回りに相当し、30年物米国債の名目利回りから予想インフレ率を差し引いています。期待インフレ率の推計には、Cieslak and Povala(2015)の調整に従ってトレンド・インフレを推計し、30年先のインフレ率を予想しています。

高い株式リスクプレミアムが平均に回帰し高くなる場合、通常は債券の上昇、株式の下落、またはその両方を伴います。図表2には、プレミアムがゼロまたはマイナスであった過去2回(1987年と1996年~2001年)の時期が示されています。1987年9月に株式リスクプレミアムがゼロになった後、株式市場は25%近く下落し、30年物実質債券利回りは80ベーシスポイント(bps)低下しました。1999年12月には、株式リスクプレミアムはグラフに表示されている期間中に最低水準をつけましたが、その後、2003年2月まで続いた株式の下落率は約40%に達しました。同じ期間に、30年物実質債利回りは約200bps低下しました。

加えて、企業収益の対GDP比は過去最高に近い水準にあります。関税の引き上げと地政学的緊張は、将来の利益に重くのしかかる可能性があります。

依然として魅力的な債券利回り

バリュエーションは、質の高い債券の見通しが長期間で最も良好であることを背景に、株式が債券のパフォーマンスを上回る可能性が低いことを示唆しています。パンデミック後に急ピッチで利上げが進み、債券市場は理想的な状況にあります。中央銀行に利下げ余地が十分にある点を考慮すると、今後投資家は利回りの上昇に加えて、潜在的な価格上昇の恩恵を享受することが可能です。

債券リターンの予測は比較的単純です。長期的に、債券ポートフォリオの開始時点利回りは、その後数年の債券リターンを予測するうえで確度の高い指標になります(図表3を参照)。質の高い債券の一般的なベンチマークであるブルームバーグ米国総合指数とグローバル総合指数(米ドルヘッジあり)の利回りは、2025年6月5日現在それぞれ約4.74%、4.94%となっています。

図表3:5年先のリターンと密接に関連する債券の投資開始時の利回り

出所:ブルームバーグ、PIMCO、2025年5月30日現在 。過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。図表は説明を目的としたもので、PIMCOの過去及び将来のいかなる商品の運用成果を示すものではありません。利回りとリターンは、ブルームバーグ米国債券総合インデックスを使用しています。インデックスに直接投資することはできません。

アクティブ運用者は投資適格債から得られる魅力的な利回りを活用し、5%~7%前後の利回りを目指すポートフォリオを構築することができます。引き続き質の高い債券を選好する見込みです。

アクティブ運用戦略で捉えるグローバル投資の機会

現地通貨の採用、規律ある財政政策、多様な資金調達といった強力な長期的な要因が重なり、安定した投資機会を創出しています。国ごとの微妙な違いや相対的価値の違いに対して、柔軟且つ俊敏に反応しそれらを活用するアクティブ運用は、避けられないボラティリティを乗り切るためには不可欠です。

市場のベンチマークを上回るリターンであるアルファを創出する機会は、グローバル市場でかつてないほど豊富に存在しています(図表4を参照)。

図表4:魅力的で多様な投資機会を提供する世界の債券市場

出所:ブルームバーグ、PIMCO、2025年5月30日現在。説明のみを目的としたものです。最終利回り(YTM)とは、債券を満期まで保有した場合の推定トータルリターンのことです。YTMは、将来支払われる債券のクーポンの現在価値を考慮しています。各国を表すインデックスは次のとおりです。米国:米国ジェネリック10年国債指数。ドイツ:ドイツ・ジェネリック10年国債指数。英国:英国ジェネリック10年国債指数。カナダ:カナダ・ジェネリック10年国債指数。オーストラリア:オーストラリア・ジェネリック10年国債指数。日本:日本ジェネリック10年国債指数。ブラジル:ブラジル・ジェネリック10年国債指数。メキシコ:メキシコ・ジェネリック10年国債指数。インドネシア:インドネシア・ジェネリック10年国債指数。南アフリカ:南アフリカ・ジェネリック10年国債指数。

多くの先進国の経済は、魅力的な債券利回りと厳しい経済見通しが共存しており、債券投資家にとっては有利な投資環境となっています。また、エマージング諸国はこれまでに示してきたレジリエンス(強靭性)を礎に成長を続けています。歴史的にグローバルへの分散投資は、単一国のポートフォリオに比べて優れたボラティリティ調整後リターンを提供してきました。分散投資は、資産配分において唯一の無料のランチ(代償なしに手に入れることができるもの)だとPIMCOは考えます。

デュレーションとイールドカーブのポジショニングの重要性

債券の投資開始時点のバリュエーションが魅力的であることに加え、成長の鈍化やインフレの安定化が予想されることから、ポートフォリオのデュレーションのポジションを近年の一般的水準よりもオーバーウエイトで運用する傾向が続くと予想しています。

株式と債券の間には歴史的に逆相関があることから、米国債は第二次世界大戦にまで遡るすべての景気後退局面でポートフォリオをヘッジする役割を果たしてきました。質の高いグローバル債券市場も同様です。

投資家は現金や短期債に比べて長期債を保有する際に、追加の利回りを求め続けるため、PIMCOの基本的な見解として、今後5年間でイールドカーブは再びスティープ化すると予想しています。米国債のタームプレミアムの推計値はプラスで、新型コロナのパンデミック(世界的流行)前の10年間から大幅に上昇しています。米国の予算論争を踏まえると、さらにスティープ化する可能性があります。

PIMCOの基本的な見解は変わらず、今後5年間でイールドカーブは再びスティープ化すると予想しています。

アクティブ運用では、イールドカーブのポジショニングを通じて債券のヘッジ手段としての役割を強化できます。PIMCOでは長期的にグローバルなイールドカーブの5年から10年部分でオーバーウエイトし、長期部分は徐々にアンダーウエイトする傾向を続けると予想しています。とはいえ、長期部分の実質利回りが上昇していることを踏まえると、タームプレミアムのさらなる上昇には限りがあるとみています。

実際、長期債の利回りが急上昇した場合、株式市場やクレジット市場に大きなダメージが生じ、それに伴い実質利回りの下方修正の根拠になりうると予想しています。また、広範な金融市場の混乱を引き起こしかねない動きが見られた場合、中央銀行が介入し、バランスシートを活用するだろうと考えています。

企業クレジットを超えた強靭性のある投資機会

クレジット市場には豊富な投資機会がありますが、固有のリスクも伴うことから、セクターと資産の慎重な選択と、バリューに基づく投資アプローチが求められます。

世界金融危機後の期間は、世界金融危機とパンデミックを受けた大規模な政策支援を背景に景気拡大が長期にわたり、積極的な融資が報われたという意味で、例外的な時期だと言えます。対照的なのが世界金融危機前の数十年で、支援は少なく、ボラティリティが大きく、景気に敏感なクレジット領域のリターンはばらついていました。

長期的に景気後退の可能性が高まっているにもかかわらず、クレジット・スプレッドは過去の平均と比べてタイトな水準にとどまっており、企業クレジット市場には公開・非公開を問わず慢心が広がっていると見受けられます。レバレッジド・ローンや非公開のダイレクト・レンディング市場では、創造的破壊要因としてのAIという観点でテクノロジーとその他の業界に多額の配分を行っているため、AIの進歩がボラティリティを増幅させる可能性があります。また、割高になった米国株式バリュエーションの調整も、広範なリスク資産の価格見直しのきっかけになる可能性があります。財政余地が限られる中、最近の「押し目買い」の時期とは異なり、真のデフォルト(債務不履行)・サイクルが数年ぶりに到来し、多くの投資家を慌てさせる可能性があります。

成長が減速する環境では、低格付けで景気に敏感な企業はリスクに直面します。短期金利の上昇により、変動金利の債券市場で借り入れを行う中堅企業には厳しさが増す可能性があります。非公開の企業クレジット市場では、資本需要が投資可能な機会を上回るペースで進み、失望を招きかねない分野を注視しています。プライベート・エクイティとプライベート・クレジットではストレスが顕在化しつつあり、景気後退時に急激に悪化する可能性があります。

公開市場と非公開市場の間では、長期的には若干の追加的な収斂が見られるでしょう。しかしながら、より強力な収斂が起きるには、流動性や透明性、クレジットの質、構造的な要因など大きな障壁が存在します。公開市場、非公開市場の両市場を網羅し、広範でグローバルな体制を有するアクティブ運用会社は、これらの市場の異なるセグメントで生じる価値の歪みに柔軟に対応し、流動性、真のクレジットの質、相対的なバリュエーションを考慮した公平なソリューションを提供し、投資家に最良のサービスを提供することができます。

米国では、銀行の資本規制と流動性規制の強化を背景に、多くの融資が引き続きプライベート・クレジット市場、特にアセット・ベースド・ファイナンスに流れる可能性が高いでしょう。これにより投資家には、かつて地方銀行が支配していた質の高い分野で貸し手になる機会が開かれます。消費者金融、住宅ローン、不動産、実物資産など、開始条件やバリュエーションが企業クレジットに比べて有利に見える質の高い分野には、引き続き魅力的な投資機会が存在するとみています。

PIMCOの経済予測会議について

PIMCOの投資プロセスは、短期経済予測会議と長期経済予測会議を軸に、ポートフォリオ・マネージャーがリスクと投資機会を360度見渡せるように設計されています。

The Fragmentation Era

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