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プロと読み解くチャート

リチャード・クラリダが解説する中立金利の見方

米連邦準備制度理事会(FRB)元副議長のリチャード・クラリダ氏が、r*とターム・プレミアムの関係を示したグラフを使って、利回りの行方と、長期的なポジショニングにおける検討事項について解説します。

実質タームプレミアム(上乗せ金利)の上昇を反映し、物価連動債のフォワードレートは実質中立金利から乖離

最近の金利変動を受けて、投資家は利回りの方向性と、リスクに対する適正な対価についての明確な答えを求めています。しかし、現在の環境が過去のトレンドと一致しない場合、その答えを見つけるのは難しいかもしれません。過去25年間、5年先5年物の米物価連動国債(TIPS)のフォワードの利回りは、米連邦準備制度理事会(FRB)の実質中立金利の推計値と密接に連動してきました。一般にr*と呼ばれるこの金利は、経済成長や雇用、インフレを妨げも刺激もしないとされる中立的な実質金利で、自然利子率の推計値を指します。これら2つの指標が密接に連動していることは、市場がFRBの長期経済見通し信頼を寄せていることを示しています。

しかし近年、5年先5年物TIPSのフォワード利回りはr*を上回って推移しています。これは中期的に実質金利がFRBの指標を上回ると投資家が予想していることを示唆しており、一部で実質ターム・プレミアムが上昇していることがうかがえます。

5年先5年物 米物価連動国債(TIPS)フォワードレート vs. r*(自然利子率)

タイトル:実質タームプレミアム(上乗せ金利)の上昇を反映し、物価連動債のフォワードレートは実質中立金利から乖離。サブタイトル: 「5年先5年物 米物価連動国債(TIPS)フォワードレート  vs.  r*(自然利子率)」このグラフは、1997年から2025年6月までの5年先5年物TIPSのフォワードレートを青線で、Laubach-Williamsモデルに基づくr*の推計値の平均を緑の線でプロットしています。グラフの説明文:最近の金利変動を受けて、投資家は利回りの方向性と、リスクに対する適正な対価についての明確な答えを求めています。しかし、現在の環境が過去のトレンドと一致しない場合、その答えを見つけるのは難しいかもしれません。過去25年間、5年先5年物の米物価連動国債(TIPS)のフォワードの利回りは、米連邦準備制度理事会(FRB)の実質中立金利の推計値と密接に連動してきました。一般にr*と呼ばれるこの金利は、経済成長や雇用、インフレを妨げも刺激もしないとされる中立的な実質金利で、自然利子率の推計値を指します。これら2つの指標が密接に連動していることは、市場がFRBの長期経済見通し信頼を寄せていることを示しています。しかし近年、5年先5年物TIPSのフォワード利回りはr*を上回って推移しています。これは中期的に実質金利がFRBの指標を上回ると投資家が予想していることを示唆しており、一部で実質ターム・プレミアムが上昇していることがうかがえます。グラフ下の脚注:出所:ブルームバーグ、PIMCO、2025年6月2日現在。過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

出所:ブルームバーグ、PIMCO、2025年6月2日現在。過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

同じような傾向がみられる10年物米国債利回リと名目中立金利対比

同様の動きは10年物米国債の利回りにも見られ、何十年にもわたってFRBの名目中立金利付近に固定されていました。

しかし2021年以降、10年債の利回りが上昇する一方、中立金利は低下しています。要するに、特に債務と赤字のダイナミクスが厳しい世界において、よりスティープなイールドカーブに沿って長期債のリスクを引き受けるために、投資家はより高いリターンを求めているのです。

長期債の利回り上昇は企業や消費者の借入コストを増加させ、長引けば経済活動に支障をきたすなど、広範な影響を与える可能性があります。

現在のような分断された環境を踏まえ、適正なタームプレミアムの評価について、どのように考えるべきでしょうか?

10年物米国債の利回り vs. 名目中立金利

タイトル:同じような傾向がみられる10年物米国債利回リと名目中立金利対比。サブタイトル:「10年物米国債利回り vs 名目中立金利」。この折れ線グラフは、2000年から2025年6月2日までの10年物米国債の利回りを青い線で、名目中立金利を緑の線でプロットしたものです。グラフの説明文:同様の動きは10年物米国債の利回りにも見られ、何十年にもわたってFRBの名目中立金利付近に固定されていました。しかし2021年以降、10年債の利回りが上昇する一方、中立金利は低下しています。要するに、とりわけ債務と赤字のダイナミクスが厳しい世界において、投資家はよりスティープなイールドカーブに沿って長期債を引き受けるリスクに対するリターンの上乗せを求めているのです。長期利回りの上昇は、企業や消費者の借入コストを増加させ、長引けば経済活動に支障をきたすなど、広範な影響を及ぼす可能性があります。現在のような分断された環境を踏まえた上で、適正なターム・プレミアムの評価についてどのように考えるべきでしょうか?グラフの下の脚注:ブルームバーグ、PIMCO、2025年6月2日現在。「名目中立金利」とは、2に Laubach-Williams および Holston-Laubach-Williamsモデルのr*推計値の平均を加えたものと定義されます。過去の実績は、将来の運用成果を保証するものではなく、信頼できる指標でもありません。その他の投資戦略、見通し、リスク情報については、補論をご参照ください。

出所:ブルームバーグ、PIMCO、2025年6月2日現在。

「名目中立金利」とは、2にLaubach-WilliamsおよびHolston-Laubach-Williamsモデルのr*の推計値の平均を加えたものと定義されます。過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

リスクが高まっているにもかかわらず、r*の推計値は引き続き1%近くで推移

答えは、r*とタームプレミアムの関係にあります。

名目利回りが上昇しているにもかかわらず、その基礎となる実質中立金利(r*)は依然として比較的安定しており、近年は若干低下すらしています。この安定性は、経済成長と生産性の基本的な推進力が劇的に変化していないことを示唆しています。

名目債券利回りは、予想される短期実質金利の平均にタームプレミアム(投資家が長期債を保有するにあたり要求する追加利回り)の合計と考えることができます。実質中立金利が安定している事実は、最近の名目利回りの上昇の多くが、経済のファンダメンタルズの根本的な変化ではなく、タームプレミアムの変化によってもたらされていることを示唆しています。

米国のr*の指標

リスクが高まっているにもかかわらず、r*の推計値は引き続き1%近くで推移。サブタイトル:米国のr*の指標。このグラフでは、Davis-Mills-Taylorモデルによるr*の推計値が青い線で示され、1965年の3%弱から2025年6月2日現在、1%弱に低下しています。グラフの説明文:答えはr*とターム・プレミアムの関係にあります。このように名目利回りが上昇しているにもかかわらず、その基礎となる実質中立金利(r*)は依然として比較的安定しており、近年では若干低下すらしています。この安定性は、経済成長と生産性の基礎的な原動力が劇的に変化していないことを示唆しています。名目債券利回りは、予想される短期実質金利の平均とタームプレミアム(投資家が長期債を保有するために要求する追加利回り)の合計と考えることができます。実質中立金利が安定しているという事実は、最近の名目利回りの上昇の多くが、経済のファンダメンタルズの根本的な変化ではなく、タームプレミアムの変化によってもたらされていることを示唆しています。グラフ下の脚注。出所:Davis, Mills, et.at Journal of International Economics、 FRB、ブルームバーグ、 PIMCO、2025年6月2日現在。影付きの領域は、Davis Millsによるr*の推計値の25~75パーセンタイルの範囲を示したものです。

出所:Davis, Mills, et. at Journal of International Economics、FRB、ブルームバーグ、PIMCO、2025年6月2日現在。

影付きの領域は、Davis Mills のr*の推計値の25~75パーセンタイルの範囲を示しています。

ターム・プレミアムの緩やかな上昇に対抗するのに役立つ、戦略的デュレーションのポジショニング

実際、ターム・プレミアムは10年ぶりの高水準に急騰しており、インフレ率の変動、金利の不確実性、政策関連のリスク、債券市場における潜在的な流動性制約などのリスクに対して投資家が要求する対価の上乗せを反映しています。

ただし、これは市場の混乱を示す突発的または孤立した事象ではありません。複数年にわたるターム・プレミアムの上昇は、リスクが秩序立って再評価されていることを示唆しており、ポートフォリオのアクティブ運用がその舵取りに寄与しています。特に、短期金利の低下とタームプレミアムの上昇は、投資家が中期的に魅力的な利回りの固定を検討できる可能性を示しています。

既にその兆候が見受けられますが、この世界の経済サイクルは増幅されていくでしょう。金融市場は変動が激しくなるとみられます。アクティブ投資家にとってこれは絶好の環境で、クレジットの選択と戦略的なデュレーションが機会となります。

すべてのターム・プレミアムの計算(ニューヨーク連銀の調査の頻度)

ターム・プレミアムの緩やかな上昇に対抗するのに役立つ、戦略的デュレーションのポジショニング。サブタイトル:すべてのターム・プレミアムの計算(ニューヨーク連銀の調査の頻度)。このグラフには、2015年から2025年6月2日までのターム・プレミアムを測定した4本の線が記されています。一番上の濃い青の線は、Philippe Andradeのターム・プレミアム。続く緑の線はニューヨーク連銀のターム・プレミアム。紫の線は、 Adrian, Crump, and Moenchによるターム・プレミアム。水色の線は、サンフランシスコ連銀のターム・プレミアムです。グラフを要約した右側の説明文。「実際、ターム・プレミアムは10年ぶりの高水準に急騰しており、インフレ率の変動、金利の不確実性、政策関連のリスク、債券市場における潜在的な流動性制約などのリスクに対して投資家が要求する補償の上乗せを反映しています。」ただし、これは市場の混乱を示す突発的または孤立した事象ではありません。複数年にわたるターム・プレミアムの上昇は、リスクが秩序立って再評価されていることを示唆しており、ポートフォリオのアクティブ運用がその舵取りに寄与しています。特に、短期金利の低下とタームプレミアムの上昇は、投資家が中期的に魅力的な利回りの固定を検討できる可能性を示しています。既にその兆候が見受けられますが、この世界の経済サイクルは増幅されていくでしょう。金融市場は変動が激しくなるとみられます。アクティブ投資家にとって、これは絶好の環境で、クレジットの選択と戦略的なデュレーションが機会となります。グラフ下の脚注:出所:ブルームバーグ、ヘイバー・アナリティクス、FRB、PIMCO、2025年6月2日現在。

出所:ブルームバーグ、ヘイバー・アナリティクス、FRB、PIMCO、2025年6月2日現在。

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元米連邦準備制度理事会(FRB)副議長のリチャード・クラリダが、成長率やインフレから債務、労働指標まで、景気サイクルにおけるマクロ経済の転換点を示す3つのチャートをご紹介します。

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