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クリストファー・クラウスが解説する米国の消費者

PIMCOのアセット・ベースド・ファイナンス事業の共同統括責任者であり、ポートフォリオ・マネージャーのクリストファー・クラウスが、米国の消費者の全体的な強靭さの背後にある微妙な違いを図解し、こうした洞察がどのようにPIMCOの融資及び投資戦略に生かされているかをご説明します。

住宅の資産価値の上昇が米国の個人消費の強さを後押し

米国の消費者は、過去数十年にわたって住宅所有者のホームエクイティ(正味の資産価値)が着実に上昇したことで恩恵を受けており、これが家計の純資産の増加の牽引役になっています。2024年後半現在、持ち家のある消費者の純資産の中央値は40万ドルであるのに対し、持ち家を持たずに賃借している消費者の純資産は約1万400ドルで、家計資産の差は40倍近くにのぼっています1。 

住宅所有者の純資産価値の上昇を支えているのは、過去最高水準の住宅価格、低い長期債務コスト(多くの世帯が2020年から2021年にかけて低い固定金利の住宅ローンを契約)と高水準の貯蓄と余剰現金です。

強い労働市場と賃金の伸びと相まって、これらの要因は、経済的な課題や融資条件の厳格化を乗り切るのに適した、強靭性のある米国の消費者基盤の形成に寄与しています。

増加する住宅持ち分

出所:PIMCO、2025年5月20日現在。このグラフは、CLTV(Combined LTV: 物件を担保とする全てのローンの額の、物件価値に対する割合)、すなわち住宅の資産価値に対する、住宅資産を担保とするすべてのローンの割合を示しています。

1アスペン研究所

積極的な与信審査により、過大評価された信用スコアに隠されたリスクが表面化

米国の家計のバランスシートは引き続き概ね健全である一方、消費者ローンもタイプによっては延滞率が上昇しています。パンデミック期には、広範な財政刺激策、ローンの返済猶予、延滞金回収の抑制により、信用スコアが人為的に押し上げられ、「FICOインフレ」と呼ぶべき現象が見られました。

平均FICOスコア2は急上昇し、2021年には約715でピークに達しました。現在、こうした借り手の一部は、延滞したり、債務不履行に陥ったりしています。パンデミック関連の支援が終息するにつれ、信用パフォーマンスが正常化し、信用スコアが一時的に押し上げられていた借り手の脆弱性が露呈しています。

2FICOスコアとは、米国で広く使われている個人の信用力を数値で表した指標です。300から850の範囲で評価され、数値が高いほど信用力が高いとみなされます。

PIMCO Equifax パネルの平均バンテージ・スコア

出所:Equifaxのデータ、PIMCOの計算、2025年5月20日現在。

下位層はFICOインフレによる影響が大きく、上位層は相対的に影響を受けず

前述のFICOインフレでは、特に信用力が下位層(601~650)と中位層(661~720)の上昇幅が大きく、FICOスコアは前者で25~30ポイント、後者で20~25ポイント上昇しました。

対照的に、信用力が上位の層(781~850)は、ほとんど、あるいは全く影響を受けませんでした。信用スコア計算モデルの再調整により、正味の効果が増幅された可能性があります。

全体としてFICOインフレは、リスクの高い借り手に偏った、かつ多くの場合、一時的な恩恵をもたらしたように見えます。

信用バケット全体の平均クレジットスコアの影響

出所:Equifaxのデータ、PIMCOの計算、2025年5月20日現在。

米国の住宅所有者向けの融資は、二極化する市場で一層魅力的に

ローンの延滞率は、ローンの種類によって大きく異なっています。

一部の借り手はきわめて順調です。2024年10-12月期現在、住宅ローン、ホームエクイティのクレジットライン、学生ローンの深刻な延滞(90日超)は、引き続き歴史的な低水準にとどまっており、ホームエクイティの増加、固定金利の債務構造、政策の追い風がこれを支えています。

対照的に、クレジットカードや自動車ローンは、インフレ圧力とパンデミック期の貯蓄の枯渇を反映して、特に下位層の借り手の間で2022年以降、着実に延滞が増加しています。学生ローンについては、今後数ヵ月、パンデミック関連の返済猶予プログラムの終了に伴い圧力が高まる可能性があります。

アセット・ベースド・ファイナンスにおいてリスクとリターンのバランスを管理する上で、消費者ローン・プールの慎重な分析がきわめて重要です。

消費者ローンのタイプ別延滞率

出所:ニューヨーク連銀、2025年5月14日現在。

引受基準の厳格化により、消費者向け融資の強靭性を強化

こうした延滞の傾向に直面して、個人向けローンを組成する企業は2024年以降、より慎重になっており、近年で最も厳しい信用基準で引き受けています。現在、新規融資の平均FICOスコアは730に近づいており、わずか3年前の700弱から上昇しています。また、借り手の収入は平均14万ドルで、2022年から25%以上も増加しています。

こうした変化は、信用サイクルが終盤とみられる中、慎重な信用分析を行い、より信頼性の高い借り手を重視する姿勢の現れと言えるでしょう。

融資引受基準が厳格化された結果、個人ローン市場はより防御的で強靭性が高くなり、パフォーマンスには構造的な追い風が吹いています。

新規融資の推移(平均年収ベース)

出所:ブルームバーグのデータ、PIMCOの計算、2025年5月14日現在。

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