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シリーズ2:債券-後編

アセットアロケーション (資産配分)

アセットアロケーション(資産配分)とは、リスク分散を図りつつ、長 期的に目標リターンの獲得を目指すために資金を複数の資産クラス に配分することを言います。アセットアロケーションは、ポートフォリ オ運用で最も重要な決定事項のひとつで、さまざまな方法が提唱さ れていますが、決まった方法はありません。また、投資家ごとの運用 目標やリスク許容度によっても最適なアセットアロケーションは異な ります。

アセットアロケーションの
アプローチ例

アセットオンリー・アプローチ

アセットオンリー・アプローチは、投資対象の期待リターンを基準と して、ポートフォリオが目標リターンを達成するために最適化された (リスク効率が最大となる)アセットアロケーションを決定するアプ ローチです。期待リターンと想定リスクの相関係数を加味し、あらゆ る配分の候補の中で同じリターンでリスクが最も低くなる組み合わせ を有効フロンティアといい、その中からポートフォリオの期待リターン に近い組み合わせを導き出します。

負債対応投資(Liability Driven Investment、LDI)

年金基金や保険会社などのように、将来支払わなければならない 債務が存在している場合、将来支払う債務に備えた資産運用が必 要とされます。このような資産運用には、債務の支払いによって生じ るキャッシュアウトフローと資産運用によるキャッシュインフローの金 額をマッチングさせる方法と債務の支払いによるキャッシュアウトフ ローを上回るリターンの獲得を目指す方法があります。

サープラス・フレームワーク

債務の増減を考慮しながら資産配分の決定を行おうとする考え方 をサープラス・フレームワークと言います。資産収益率と債務増加率 の差をサープラスリターン、その標準偏差をサープラスリスクと言いま す。債務のマイナスリターンを制約条件として加え、最適化アプロー チと同様に有効フロンティアを算出し、その中から目標サープラスリ ターンに近く、サープラスリスクを最小化する資産の組み合わせを導 出します。

リバランスとは

保有資産の市場価格の変動などにより、予め定めたアセットアロケー ションと実際のポートフォリオに乖離が生じた場合、元のアセットアロ ケーションに戻す投資行動をリバランスと言います。年金資産の運用 などでは、配分比率に一定の乖離幅が生じた場合に一定のルール(リ バランスルール)に従って機械的にリバランスを行うこともあります。

アセットアロケーションの注意点

アセットアロケーションは、保有資産の時価総額の配分比率で表しま す。しかし、ポートフォリオの保有資産をリスクファクターで分解して みると、時価総額比率の大小とは異なるリスクファクター構成になっ ていることがあります。そのような場合、時価総額ベースで大きな配 分をしている資産以外の資産やファクターが実際にはポートフォリオ のリターンに大きく影響している等、時価総額の配分比率からは想 定しにくい下落リスクを含んでいる可能性がある点には注意が必要 です。

リスクファクターについて

リスクファクターとは、投資対象の資産(株式、債券、REITなど) ごとに共通して存在する価値変動の要因となるものです。例えば、 株式のリスクには、株式ベータ(広範な株式市場全体の動きに対す る連動性)、国や業種等による変動要因、及び企業固有のリスクに よるものに分けることができます。債券のリスクは金利リスク(金利 の変化に対する価格感応度)とクレジットリスク、及び企業固有のリ スクによって説明できます。外国通貨建ての資産には為替リスクも 加わります。

このような背後のリスクファクターへの配分を意識することによっ て、ポートフォリオのリスクをより分散させた資産クラスの組み合わ せを選ぶことができます。

各資産クラスにおけるリスクファクター

アセットアロケーションにおけるリスク管理

アセットアロケーションを構築する際、リスクファクターを考慮するこ とで、投資家による経済や金融市場に対する見方を反映させながら も、意図せざるリスクファクターを排除し、自ら意図したリスクファ クターを取得しつつ最大限に分散させたポートフォリオを効果的に 選択することができます。リスクファクター分析とストレステスト分 析の具体例を見てみましょう。

リスクファクター分析の具体例

確定給付企業年金の平均資産配分(企業年金連合会公表の「企業 年金実態調査」(2019年度概要版)より)にリスクファクター分析を 行うと、時価総額のウェイトとリスクファクター寄与度は以下のよう な結果となります。

時価総額ウェイト
リスクファクター寄与度

リスクファクター分析からは以下2点の内容が確認できます。

  1. 時価総額ウェイトとしては相対的に低い株式が、ポートフォリオ のリスクの過半を占める
    時価総額ベースのアロケーションでは株式が約20%(外国株式 12.2%、国内株式9.0%)ですが、リスク寄与度としては株式が全 体の58%と大きな割合を占めています。
  2. 金利リスクの取得が株式を中心としたリスクの分散効果につながる
    金利のリスクファクターは-6%とマイナス寄与となっており、株式 を中心としたリスクに対し分散効果を示しています。

ストレステスト分析の具体例

つづいて、確定給付企業年金の平均資産配分に、過去の市場ストレ ス局面を想定したストレステスト分析を行った結果は以下の通りで す。

ストレステスト分析の具体例
ストレステスト分析の具体例

この分析からは、以下の内容が確認できます。

  1. 市場ストレス時のダウンサイドリスク水準の把握
    過去のストレス局面のストレステストからダウンサイドリスクの大 きさを推定し、その水準が許容可能な範囲にあるかどうか確認し ておくことは、リスク管理上重要なプロセスです。
  2. 市場ストレス時の下落要因の把握
    マーケットの下落局面では一般的に株安・円高が同時に起こるこ とが多く、株式と為替のリスクファクターが大きい場合はマーケッ トの下落局面に対して脆弱なポートフォリオとなっている可能性が あります。対策としては為替リスクを削減するために、為替ヘッジ の導入などが選択肢となります。
  3. 市場ストレス時の分散効果の源泉を把握
    リスク資産に特にストレスがかかるタイミングで、金利ファクター がポートフォリオ全体の下落を緩和させているという傾向が見ら れます。多くの局面において、債券資産には市場ショック時に株 式等のリスク資産の下落を緩和させる効果が期待されます。

このように、リスクファクター分析を通じてポートフォリオのリスクを 特定し、ストレステスト分析を通じてポートフォリオのダウサイドリス クを可視化することで、投資家が意図したアセットアロケーション戦 略の策定につながります。

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