日本の投資家が外国債券に投資する場合、債券価格の変動に加え、 為替の変動による影響を受けます。為替ヘッジとは、こうした為替変動 のリスクを回避するために、為替の先渡し取引(フォワード取引)等を 用いて、外貨を自国通貨に交換する契約を結ぶことで、将来的な為替 変動のリスクを軽減または排除しようとするものです。
一般的な為替ヘッジ
日本円を基準とする日本の投資家が外貨建ての外国債券に投資す る場合、得ることができるリターンは、現地通貨で評価した外国債 券のリターンと、対日本円で評価した現地通貨のリターンに分解す ることができます。
例えば、日本の投資家が米国債(米ドル建て)に投資する場合で は、日本の投資家のリターンは、米国債のリターン(米ドル建て)と 米ドルのリターン(対日本円)に分解することができます。
例1:米国債 額面 $100,000を購入後、売却
購入時:債券価格 $100.00, 為替レート(スポットレート):1米ドル=92.26円
売却時:債券価格 $101.15, 為替レート(スポットレート):1米ドル=91.26円
外国債券のリターン(現地通貨):101.15/100-1=1.15%
現地通貨のリターン(対日本円):91.26/92.26-1=-1.08%
外国債券のリターン(対日本円):(1+0.0115) × (1-0.0108) ‒ 1 = 0.05%
例1では、債券価格は上昇したものの、米ドルは円に対して下落(米 ドル安・円高)したため、当該米国債の投資リターンはほぼフラット になっています。
このように、為替の変動は投資家にとって必ずしも好都合なものに なるとは限らないため、中には為替の影響を回避したい投資家も存 在します。このような投資家による為替リスクの排除または軽減を、 為替ヘッジと呼びます。為替ヘッジを行うためには、リスクを排除ま たは軽減したい通貨(ヘッジ対象となる通貨)を売り、投資家にと って基準となる通貨を買います。例1では、米ドル売り・日本円買い の為替ヘッジ取引を行うことで、投資リターンは、米ドルのリターン (対日本円)に左右されなくなります。一方、為替ヘッジを行うと、 為替の影響を排除または軽減することはできますが、ヘッジコスト (またはプレミアム)が発生します。
これは、通貨間の金利差による有利・不利を解消するために発生する もので、一般的には、基準となる通貨(例1では日本円)がヘッジ対象 となる通貨(米ドル)よりも低金利である場合、為替ヘッジを行うには コストがかかります。逆に基準となる通貨の方が高金利である場合、 ヘッジプレミアムを獲得することができます。
為替ヘッジを行うためのツール、つまり通貨を売買するツールとして は、通常、為替の先渡し取引(フォワード取引)が使用されます。フォ ワード取引とは、将来のある時点を受け渡し日として、あらかじめ価 格ないし為替レートを決定して行う為替予約取引です。為替リスクの 観点から見ると、フォワード取引によって為替の取引を行うことは、 実際に現物の通貨を売買するのと同じ効果があります。例えば米ド ルの為替リスクを日本円にヘッジする場合、米ドル売り・日本円買い のフォワード取引を行うことで為替リスクを米ドルから日本円に変換 し、対日本円での為替リスクを排除または軽減します。