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経済・市場コメント

日次の時価評価は流動性を保証しない:価格評価を巡る前提と課題

プライベート・クレジット市場においては、時価評価の頻度を高めても、市場で観察可能な取引の価格を参照しない限り、透明性や正確性の向上への寄与は限定的です。
Daily pricing is not daily liquidity
日次の時価評価は流動性を保証しない:価格評価を巡る前提と課題
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流動性とは、資産を迅速に、十分な規模で、かつファンダメンタルズを反映した価格で売買できるかどうかを表わす概念を意味します。PIMCOでは、プライベート・クレジット市場における流動性向上に向けた取り組みを、歓迎すべき動きであると考えています。しかしながら、真の価格発見機能の欠如といった、市場に内在する構造的な制約が解消されなければ、流動性は本質的に改善されることなく、概念のみが先行する結果となるでしょう。

プライベート・クレジットのポートフォリオにおいて、日次の時価評価をめぐる議論は、会計上の狭い問題から、更新が遅れやすく、ばらつきの大きい市場評価をどのように改善するかという論点に、変わりつつあります。この変化の背景には、2つの関連する動きが見られます。

一点目として、「BDC(ビジネス・デベロップメント・カンパニー)」が保有するローンの評価価格の格差は、ここ数四半期において急速に拡大しています。2025年12月31日時点では、同一銘柄の評価価格の間に、平均5ポイントの乖離が観察されています。(図表1)。このような乖離と、同一資産に対するアームズレングス原則に基づく公正価格の決定という概念との整合性を見出すことは、容易ではありません。

図表1: BDC間における保有ローンの評価価格の格差は拡大傾向に

図表1の折れ線グラフは、2社以上のBDCが保有する第一順位担保付きローンの評価価格の格差が、2019年から2025年にかけて拡大し、2025年の年末時点で約5.6ポイントに達したことを示しています。
出所: PitchBook LCDおよびPIMCO。2025年12月31日現在。「ポイント」は元本金額に対する割合(%)を表わします。「BDC(ビジネス・デベロップメント・カンパニー)」とは、米国の中小企業に投資するファンドを指します。

米国財務会計基準審議会(FASB)の会計基準では、レベル3分類の資産に関して、運用会社が前提条件、割引率、比較対象を決定する際に裁量の余地が与えられるため、ある程度の価格格差が生じることは避けられません。しかしながら、ここ最近の格差の拡大状況を見る限り、観察可能な取引がないことは、この市場の健全な特徴とはもはや言えなくなっています。

報告ベースの純資産価額(NAV)が、市場で取引可能な価格水準というよりも、運用会社の見解を反映していると考えられるケースも見受けられます。参考情報として、PIMCOの推計によると、2社以上のBDCが保有するローンのうち、価格格差が2ポイント未満の銘柄が全体の83%を占める一方で、残りの17%(同格差が2ポイント以上)では、格差が大きい銘柄の割合が顕著に高くなっています(図表2)。

図表 2: 価格格差が2ポイント以上の銘柄では、格差が大きい銘柄の割合が顕著に高い

図表2の円グラフは、2社以上のBDCが保有するローンのうち、価格格差が2ポイント以上の銘柄では、格差が大きい銘柄の割合が顕著に高く、10ポイントを超える銘柄の割合が約63%を占めることを表わしています。
出所: PitchBook LCDおよびPIMCO。2025年12月31日現在。
二点目として、NAVでのエントリー(投資開始)とエグジット(投資終了)が可能な「エバーグリーン型ビークル」が、急速に普及しています。クローズドエンド型のドローダウン・ビークルの場合、時価評価の更新頻度や正確性の問題がおおむね会計上の問題に限定されるのに対して、セミリキッド・ビークルでは、取引価格はNAVに基づいて決まります。このため、時価評価の更新が遅れたり、大きなばらつきが存在するケースでは、解約する投資家が残留する投資家の利益を損なう(あるいは増やす)形で、棚ぼた的な利益を得る(あるいはヘアカットを甘受する)ことになりかねません。投資家の解約請求に制限を設けるゲート規定によって、投資家の間で極端な取り扱いの違いや不公平な取り扱いが生じるリスクが緩和される可能性があるとはいえ、根本的な問題が解決されるわけではありません。

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