キンバリー・スタフォード(プロダクト戦略部門グローバル統括責任者、以下キンバリー) : 現在投資家にとってレジリエンスとは何を意味するのか。なぜ今、債券に注目すべきなのでしょうか。
ダニエル・アイバシン(グループ最高投資責任者、以下ダニエル) : 要点は、投資開始利回りの魅力にあります。その投資価値は大きく魅力的な水準にあります。その魅力は米国に限らず世界各国に見られます。より過度に不確実性が高まっている現在の環境では、これまでとはやや異なるアプローチを取る必要があると考えています。さまざまな相反する力が働いています。足元のインフレ要因が中期的にはディスインフレ要因に変わることもあります。だからこそ、質の高いインカムの獲得に投資家は注力すべきだと考えます。AIが期待されているほど生産性向上に寄与した場合、特定のビジネスモデルや企業、特定の地域や所得層に破壊的影響を及ぼす可能性があります。伝統的な質の高いグローバル分散を通じたリターンの追求に注力しつつ、変化の影響を慎重に見極めることが重要です。
キンバリー : 散発的なものから持続的なものに変わった地政学リスクをどう評価すべきでしょうか。
リチャード・クラリダ(グローバル経済アドバイザー、以下リチャード) : 今後5~10年は地政学リスクが非常に高い水準で推移する見通しです。高止まりする地政学的な不確実性は今年武力衝突へと発展しました。経済安全保障を巡る各国の動きも加速しています。AIやテクノロジーだけでなく重要鉱物やエネルギー供給の要衝を巡る動きも今後世界情勢の構造的な特徴になるでしょう。こうした環境ではアクティブ運用が鍵を握ります。国・セクター・企業の選択に加えボトムアップ分析とマクロ分析が運用成績を大きく左右するからです。
キンバリー : それでは、なぜ債券の先行きに強い確信を持てるのでしょうか。
ダニエル : 投資の観点で最も重要なのは、投資開始利回りの水準です。例えば、米物価連動国債(TIPS)のようなインフレ連動資産を見ると、価格には依然としてかなり低いブレークイーブン・インフレ率が織り込まれています。つまり、中央銀行にこれまでほど大きな役割を期待する必要はありません。これはリターンのクッションとなります。名目債にも物価連動債にも債券市場の内外で非常に魅力的な水準が見られます。債券の短期的な方向性を強気にみていますが、この先数年は利回りが大きな役割を果たすでしょう。質の高い資産で分散ポートフォリオをここ数十年見られなかった利回り水準で構築しやすい環境にあります。
キンバリー : PIMCOでは世界の設備投資額が今後5年間で約14兆ドル増加し、AIインフラ関連が約7.6兆ドルを占めると予想しています。これほどの規模の設備投資の波を見込むなか、ポートフォリオ構築にどのような影響があるのでしょうか。
ダニエル : 現在のAIの波がリスク分布の裾を広げていることは明らかです。これは過去のインターネット投資サイクルでも見られたことです。足元のバリュエーション水準を踏まえると、今後株式市場の変動性が高まり近い将来に株価が大きく調整する可能性もあります。これは先ほど触れた良好なリスク調整後リターンの追求には戦略の見直しが必要になるという点にもつながります。要するに、AIの生産性向上の効果が大きいほど既存のビジネスモデルへの影響も大きくなります。その結果、リターンの変動性は一段と高まるでしょう。これこそが「信用サイクルが始まった」と考える背景です。
キンバリー : このような環境でレジリエントなリターンの源泉をどのように見いだせるのでしょうか。
ダニエル : 投資家にとって何より重要なのは、分散を徹底することです。それは単に分散によってポートフォリオの変動性を抑えるためだけではありません。足元の債券市場では非常にユニークな投資環境が生まれており、追加的な利回りと分散効果の双方を追求できます。したがって、グローバルな投資機会を捉えるには米国外の通貨建て債券も対象となります。エマージング市場は他の多くのクレジット市場ほど投資が集中しておらず、魅力的な分散効果が見込めます。ここでお示ししているのは魅力的な水準の利回りを起点にグローバル投資を通じてスプレッドを上乗せし、さらに戦術的なトレーディングも柔軟に組み合わせるという発想です。足元のバリュエーションを踏まえ高い不確実性が続く一方で、グローバルな投資機会が広がるなか、これがダウンサイドリスクを大きく抑えながら株式並みのリターンを追求する有効なアプローチになるとPIMCOでは考えています。
ご留意事項
2026年6月16日収録
全ての投資にはリスクが伴い、価値は下落する場合があります。債券市場への投資は市場、金利、発行体、信用、インフレ、流動性などに関するリスクを伴うことがあります。ほぼ全ての債券及び債券戦略の価値は金利変動の影響を受けます。デュレーションの長い債券及び債券戦略は、より短い債券及び債券戦略と比べて金利感応度と価格変動性が高い傾向にあります。一般に債券価格は金利が上昇すると下落します。低金利環境下ではリスクが高まります。債券取引におけるカウンターパーティーの取引能力の低下が、市場流動性の低下や価格変動性の上昇をもたらす可能性があります。債券投資では、換金時に当初元本を上回ることも下回ることもあります。株式の価値は一般的な市場、経済、産業の実体と見込み両方の状況によって減少する可能性があります。分散投資によって、損失を完全に回避できるわけではありません。
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