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経済・市場コメント

AIインフラ向け投資ブームの中で問われる投資の規律

AIインフラ分野への投資が加速する中で、取引のストラクチャー、担保資産、資産・負債の整合性に重点を置く慎重なアプローチは、投資家が有望な投資機会を選別する際の支えとなります。
Investment Discipline Amid the AI Infrastructure Boom
AIインフラ向け投資ブームの中で問われる投資の規律
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主な結論

  • 現在のAIブームの中で、実物インフラに対する膨大な需要が生まれています。AIの成長を支えるため、データセンター、発電設備、チップの開発が必要になり、持続的な投資機会に結び付いています。
  • 最大の投資機会は債券とローンの分野に数多く見られます。業界で確固たる地位を築いた大手テクノロジー企業が、インフラ向け支出を目的とする借り入れを拡大する流れの中で、債券市場では投資機会が浮上しています。
  • 実物資産を裏付けとする、洗練されたストラクチャーの案件にフォーカスすることが肝要です。必要不可欠なインフラに担保付きの投資を行うことで、テクノロジーが進化を続ける中でも、リスクを抑えつつ安定的なリターンを追求することが可能になります。
データセンターからGPUハードウェアスタック、発電設備、冷却設備に至るまで、AIの大規模な運用を可能にする実物インフラを整備する動きが、企業間で加速しています。AIのエコシステム全体においてインフラ整備に必要な資金は、2030年までに5兆ドルを上回る可能性があるとの推計も示されています(図表1)。投資家にとっては、設備投資額の大きさだけが好機となるわけではありません。むしろ、「実物資産」と「契約に基づく予測可能なキャッシュフロー」を裏付けとするストラクチャード・クレジット案件を通じて、必要不可欠なインフラに投資できる点にあります。

図表1: ハイパースケーラーの設備投資はさらに増加する見通し

図表1の積み上げグラフ「巨大テクノロジー企業による設備投資」は、2021年から2030年にかけての主要テクノロジー企業による設備投資の実績と見通しを示したものです(単位:10億ドル)。各社の数字は次のとおりです。アマゾン(2021年:610億ドル→2030年:2,240億ドル)、グーグル(2021年:250億ドル→2030年:2,690億ドル)、メタ(2021年:190億ドル→2030年:1,810億ドル)、マイクロソフト(2021年:240億ドル→2030年:2,870億ドル)、オラクル(2021年:20億ドル→2030年:770億ドル)、その他(2021年:410億ドル→2030年:1,210億ドル)。設備投資の総額は、2021年の1,720億ドルから2030年には1兆1,590億ドルへと増加する見通しであり、特に前年比約2倍となった2025年以降、テクノロジー・インフラ向け投資が大幅に加速する形となっています。
出所: ブルームバーグ、マッキンゼー、シティグループ、オックスフォード・エコノミクス、PIMCOの分析。2026年5月15日現在。

テクノロジーと事業環境が変わり続ける中で、どのような形で長期プロジェクトに資金をコミットするかが、重要な問題となります。PIMCOの見解では、AIの勝ち組を見極めることよりも、AIのエコシステムにおいて最上位に位置する「アプリケーション(応用領域)」の階層の1つ下に位置する、「インフラ」の階層に重点を置くことが鍵となると考えられます。その際、強制執行可能な担保資産、主要契約に対する支配権、計画が実現しない場合でも返済の確実性を担保する保護措置を確保することが、ポイントになります。

また、プロジェクトの開発において、スチュワードシップ(受託者責任)の視点も欠かせません。現地の公益企業や共同体と連携することによって、データセンター投資の基盤は盤石になります。開発を円滑に進めることで、必要な発電・送電のインフラが確保され、固定費は分散されます。また、地域経済の活性化を促進するとともに、地域社会が開発の恩恵を確実に共有する結果、料金負担の悪化を防ぐことにもつながります。PIMCOでは、既存の制約下にあるシステムに単に電力需要を上乗せするのではなく、データセンターの建設が地域全体のインフラ需要に貢献するようなプロジェクトを選好しています。

さらに、投資先のクオリティも重要な判断材料になります。世界最大手のハイパースケーラーは、クラウド・サービスを提供する巨大なテクノロジー企業であり、設備投資は増加傾向にあるものの、一般に多様な収益源、堅固なバランスシート、事業戦略の長期的な柔軟性を備えています。これに対して、単一のAIアプリケーションのみに依存し、いまだ黒字転換を果たしていないテナント企業(プラットフォーム利用企業)のリスクは、性質が大きく異なります。

図表2: AIインフラ向け資金需要においてデット市場は重要な役割を果たす見通し

図表2のウォーターフォール図「米国ハイパースケーラーの資金調達ニーズと調達源(2026~30年)」は、キャッシュフローの内訳を示したものです(単位:1兆ドル)。資金調達ニーズの内訳は次のとおりです。設備投資(4.7兆ドル)、配当(1.5兆ドル)、債務返済(0.1兆ドル)、その他投資(1.1兆ドル)、公共料金(0.4兆ドル)、資金需要総額(7.9兆ドル)。調達源の内訳は次のとおりです。営業キャッシュフロー(5.8兆ドル)、投資適格債発行(1.5兆ドル)、ハイイールド債発行(0.2兆ドル)、代替的な調達源(0.4兆ドル)。この図表は、資金調達ニーズの積み上がりと、それが多様な調達源によってどのように充足されるかを可視化したものです。
出所: JPモルガン(AI設備投資向け資金調達の詳細)、ブルームバーグのデータ、キャピタルIQ、インターコンチネンタル・エクスチェンジ(ICE)、PIMCOの分析。2026年5月15日現在。

具体的に考えると、担保付きのファイナンス案件に参加する投資家には、一般的な債務履行に関する誓約に加えて、実物資産やリース料収入、キャッシュフローを生む契約などに対する直接的な請求権が付与されることになります。GPUファイナンスであれば、対象はチップ自体や収入回収用の口座に対する担保権にまで及びます。また、データセンターのリース契約や電力購入契約などの主要な契約についても、担保パッケージに組み入れるべきと考えられます。

さらに、キャッシュフローに対するコントロールも、同様に重要な役割を担います。洗練されたストラクチャーでは、収入が不足した場合やデット・カバレッジ・レシオ(元利金返済カバー率)が所定の水準を下回った場合に、債権者保護の目的でキャッシュフローを準備金口座に振り向ける仕組みが備わっています。また、不足の状態が続く場合には、債務の返済が繰り上げられることになります。

一方、案件の条件決定に際しては、その時点のリスクだけでなく、長期債の残高が急速に積み上がるセクターの供給見通しを織り込んだクレジットスプレッドを設定すべきでしょう。また、PIMCOの見解として、投資家は、個別性の高いプライベート・クレジット型の保護条項を組み込んだとしても、取引流動性が必ずしも損なわれるわけではない点を踏まえ、流動性の最大化を追求すべきと考えます。規則144Aに基づく私募証券のような仕組みであれば、発行体サイドの柔軟性を確保しつつ、説明責任も担保しながら、適格機関投資家(QIB)に分類される大手の投資家は、流動性が高く厚みのある市場において取引を行うことが可能となります(詳細は、2026年3月付の経済・市場コメント「パブリック市場とプライベート市場でスプレッド水準が接近しても、流動性の差は解消されない」を参照)。

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