Skip to Main Content
マクロ経済の羅針盤

AI・市場支配力・労働分配率の低下

PIMCOのエコノミストおよび各分野の専門家によるデータ分析から読み取れる注目すべきポイントをお届けいたします。
AI, Market Power, and Diminishing Labor Share
AI・市場支配力・労働分配率の低下
Headshot of Tiffany Wilding
 | 読了まで{read_time}分

今年1月と2月に公表したレポート「マクロ経済の羅針盤」において論じたように、人工知能(AI)に関連するテクノロジーの急速な普及を受けて、世界経済の多くのセクターでは驚異的なスピードで構造転換が進んでいます。上記レポートの公表後、米国では、AIの導入を支えるイノベーション、構成要素、インフラ、エネルギーなど、関連する需要が飛躍的に増加し、インフレ圧力を押し上げ始めています。国家安全保障上の重要性が増していることを踏まえると、今後もインフレ圧力は持続する可能性が高いと考えられます。

もっとも、中長期的に見ると、AIの影響への適応が進むことで、ディスインフレ圧力に転じることも考えられます。AIが生み出す所得の総額が、労働者や消費者に十分に還元されなければ、なおさらです。

図表1: コンピューター部品の価格は2026年に入って急激に上昇

図表1の折れ線グラフは、2024年3月から2026年4月にかけての、コンピューターに関連する3つの物価指数の動きを比較したものです(輸入物価指数:コンピューター、CPI-U:コンピューター用ソフトウェアおよびアクセサリ、PPI:電子部品)。3つの物価指数はいずれも、2024年および2025年の大半の期間において100近辺で比較的安定していたものの、2026年1月から急激に上昇しています。
出所:米労働統計局(BLS)およびヘイバー・アナリティクス。2026年3月現在。CPI=消費者物価指数、PPI=生産者物価指数。データの欠落は2025年後半の米連邦政府機関閉鎖の影響によるものです。

米国では、AIに関するテーマが需要の短期的な押し上げ要因となり、コンピューター、メモリー、ゲーム関連部品、その他AI関連製品の消費者価格は上昇傾向にあります。こうした品目は、米連邦準備制度理事会(FRB)が重視する個人消費支出(PCE)指数に占める比重が比較的高く、同指数には上昇圧力が確認されています。その結果、エネルギー価格の高騰が主要セクター(旅行サービス等)に与える影響にも目配りする、FRBの政策運営は複雑化しています。実際、これはPIMCOの基本シナリオとは異なりますが、市場では2027年の利上げ見通しが織り込まれるようになっています。

金融市場やFRBでは、AIが経済に与える短期的な影響について議論が重ねられているものの、中期的な影響も軽視するべきではありません。AIの導入によって可能性の限界が広がるにしても、その恩恵が経済全体で均等には行き渡らない可能性があります。恩恵の大部分が、資本保有者や一部の技能労働分野に集中する可能性があります。

米国経済において、効率性と生産性が向上し豊かさが増すことの恩恵が、労働者に十分還元されずに実質賃金が伸び悩めば、(政策要因による物価の変動はあり得るにしても)長期的には物価の下押し圧力が強まる可能性があります。

図表2:米国では労働分配率が長期的な低下傾向に

図表2の折れ線グラフは、1947年第1四半期から2026年第1四半期にかけての、米国の非農業部門企業における四半期ごとの労働分配率を示しています。この系列は1947年第1四半期に65.5%で始まり、1960年第4四半期に66.2%で最も高い水準に達しています。労働分配率は長期的に大きく低下し、グラフの全期間を通じて11.4%ポイント低下、2026年第1四半期には過去最低となる54.1%に達しています。
出所:米労働統計局(BLS)およびヘイバー・アナリティクス。2026年3月現在。

この期間中、全体として、技術進歩の恩恵は労働者側よりも資本保有者側に、比較的技能の低い労働者よりも高い労働者に及んでいます。米国では2000年代以降、比較的技能の低い労働者の実質賃金水準が横ばいもしくは低下傾向にありますが(出所:米労働統計局)、こうした傾向は事あるごとに「技能偏向型技術変化」と表現されています。

2000年代の経験と同様に、AIがもたらす破壊的な影響には、セクターや職種によって差が生じると予想されますが、長期的に見ると、AIによって代替できないタスクへと、労働力が再配分される可能性が高いと考えられます。ヘルスケア、教育、建設などのセクターでは、現在の技術的制約や人口動態に起因する需要を背景に、すでに労働力を吸収する動きが進んでいます。再配分の結果、実質賃金が生産性の伸びに追いつくかどうかが重要な問題になります。

1Tyna Eloundou, Sam Manning, Pamela Mishkin, and Daniel Rock. 「GPTs are GPTs: An Early Look at the Labor Market Impact Potential of Large Language Models.」arXiv .org paper 2303.10130 (2023年8月改訂).

2Maxim Massenkoff and Peter McCrory.「Labor market impacts of AI: A new measure and early evidence.」Anthropic Economic Research (2026年3月).

最新のレポート

マクロ経済の羅針盤

PIMCOのエコノミストおよび各分野の専門家によるデータ分析を基に、米国金融政策を巡る足元の動向と、そこから得られる主な示唆をお届けします。

マクロ経済の羅針盤

PIMCOのエコノミストおよび各分野の専門家によるデータ分析を基に、米国金融政策を巡る足元の動向と、そこから得られる主な示唆を整理します。

マクロ経済の羅針盤

マクロ経済の羅針盤では、PIMCOのエコノミストや専門家によるデータ分析から読み取れる注目すべきポイントをお届けいたします。

マクロ経済の羅針盤

マクロ経済の羅針盤では、PIMCOのエコノミストや専門家によるデータ分析から読み取れる注目すべきポイントをお届けいたします。

場所を選択


Americas

Asia Pacific

  • Japan

Europe, Middle East & Africa

  • Europe
Back to top

PIMCO.comを離れる。

PIMCOのウェブサイトを離れようとしています。